おんざまゆげ

@スラッカーの思想

死はなぜ悪なのか?― 「死」についての雑記(2)

 なぜ、死んでしまうことは「悪い」ことなんでしょうか。

 これは明らかに馬鹿げた問いであるように思います。

 死んでしまうことが悪いことなのは、あらためて問うまでもなく自明であると思われます。しかし、そこで想定されているのは二人称(あなた)の死や三人称(彼・彼女)の死のことであって、一人称の「私の死」はそれらとはかなり位相が異なっていると思います。

 たとえば、いま地球が一瞬で消滅して人類が全滅したら、これは「悪い」ことになるのでしょうか。それが悪いことだとしたら、いったい誰にとって悪いことになるのか。残された人は誰ひとりいないのだから、そこには悲しむ人も喪失感を抱く人も、痛みや怒り、苦しみや憎しみも存在しません。

 だとしたら、人類消滅は何事でもないのか。so what?なのか。

 一人称の死もその問いと同じ構造にあります。つまり、死んでしまうことは当人にとって悪いことになりえるのかー。死んでしまった人はもはや存在していませんが、存在していない人が害悪を被ることなどありえるのでしょうか。

その問いに「何事でもない」といった人がいます。

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