おんざまゆげ

@生き延びるために...

トランスフォビアとパス至上主義 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (4)

 今回はトランスセクシュアル(TS)に対する差別と、このTS差別(トランスフォビア)の根底にあると思われる本質主義的性別二元論(=パス至上主義)について考えてみたい。

 TSトランスセクシュアルの略)の問題系は、現存の性の制度に生きるすべての人の問題系であり、個別的な話題ではなく、性制度の構造そのものに関わるもの…(竹村2013:45)

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社会構築主義と「クィア存在」の可能性 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (2)

 前回異性愛主義について論じた。要約すると以下のようになる。

 異性愛主義ヘテロセクシズム)は、性差別(セクシズム) —— 性差の階層秩序女性差別と性対象の階層秩序(同性愛差別) —— をつくりだし、この性差別のうえに支えられているのが異性愛主義([ ヘテロ ] セクシズム)という規範システムである。

 異性愛主義は「男」と「女」という二つの性的身体を必要とし、この二つの身体を強制的に組み合わせる。このセックス・ジェンダー二元論を巧妙に支えているのがセクシュアリティという神話である。異性愛主義のセクシュアリティは、たった一つの「正しいセクシュアリティ」しか認めない。

「正しいセクシュアリティ」は、性器=生殖セクシュアリティとして機能し、本来は多様であったエロスの自由を「膣へのペニスの挿入」という矮小化したエロスに仕立て上げる。また、性器=生殖セクシュアリティは、生殖イデオロギー(次代再生産というエロスの目的論)と、家族イデオロギー(家庭というエロスの合法化)によっても支えられている。生殖イデオロギーと家族イデオロギーは資本主義社会からの要請(あるいは結託)として機能する。

 セックス(生物学的な性差)ジェンダー(社会・文化的な性差)は、セクシュアリティという神話をとり入れることによって、身体の二分割とジェンダーの二分割を正当化し、セックスがあたかも自然であるかのように隠蔽する。

 わたしたちが疑問視するのは、ジェンダー規範だけではない。この世に誕生した子どもの身体を外性器の特徴から「男」と「女」という二つの身体(セックス)に強制的に分割することも、当然のことながら疑問符がうたれることになる。

 

 今回は、竹村和子さんらの言語的社会構築論を紹介しながら、生物学的性差としての身体(二つの性的身体という虚構)がいかに言語的、社会的に構築されているかを考え、最後に「クィア存在(マイノリティ)」の生き方としての可能性について論じてみたい。

〈セックスは本質的か〉
 … ジェンダーセクシュアリティ/セックス——とくにもっとも本質的に決定されているとみなされているセックス——がいかに社会的につくられ、所与の本質的な事実となるかという仕組みを解明することなく、公的制度、私的領域、自己把握のすべてを覆う性の体制を置換していくことにはならない。(竹村 2000:46)

〈セックスの虚構性〉
 ... 解剖学的な女というカテゴリーも、近代医学が追証しようとしているフィクションではないのか。女を判別する基準は、性器をふくむ身体形態なのか、ホルモンなのか、染色体なのか、出産能力なのか。しかし皮肉なことに、そういった判別基準は近代医学の発達によって逆に曖昧にされているものではないか。判断基準を精密にすればするほど、一個の個体を男女に弁別することの正当性が揺らぐことにはならないか。また女性性器をもっていることと、社会的に〈女〉であることのあいだに、どれだけの直接的な因果関係が見いだされるのか。… (竹村 2002:73)

 

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異性愛主義と性差別 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (1)

 今回は竹村和子さんの書籍(論文集や対談集)などをひもときながら「セクシュアリティ」について考えてみたいと思います。

 すなわち [ヘテロ]セクシズムが、わたしの身体/精神の隅々までを構造化している … (竹村 2002:135)

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『安心して絶望できる人生』/「生きづらさ」の当事者研究

 今回は「当事者研究」に関する書籍をご紹介いたします。ソーシャルワーカーの向谷地 生良(むかいやち いくよし)さんが2006年に出版した著書『安心して絶望できる人生』をひもときながら当事者研究の概要を以下にまとめてみました。

 当事者研究とは、北海道の浦河に存在する「べてるの家」(統合失調症などを抱える人たちが暮らす共同体)から生まれた実践活動です。

 この「当事者研究」という言葉に出会って以来、わたしが今まで行っていたことのすべては「当事者研究」だったのだと再認識することができました。

 

安心して絶望できる人生 (生活人新書)

安心して絶望できる人生 (生活人新書)

 

 

  • べてるの家の主な実践活動
  • 当事者研究」とは何か 
    • 当事者研究」の誕生 
    •  自分の「生きづらさ」に名前をつける
    • 当事者研究は「研究する」という態度から生まれる
    • 当事者研究の理念...「自分自身で、共に」
    • 当事者研究の“効能”
    • 「個人苦」から「世界苦」へ 
    • “悩み”から“課題”へ 
    • “悩み”を“苦労”に変え、“苦労”を“テーマ”に変える
    • 当事者研究の大切なエッセンス ...根拠なき信頼...
    • 「人の評価」への依存問題 
    • べてるの家のシステム
    • 当事者研究の「問い」という営み 
  • べてるの家の活動理念
    • べてるの家の「理念集」
    • 「昇る人生」から「降りる人生」へ
    • 弱さの情報公開
    •  弱さの強さ 
    • 「あきらめる」こと ... 生き方の高等技術
    • エンパワーメント
  • 当事者研究の事例
    • Bさん(男性、年齢20代) p76より
    • 「本当の自分」と評価の問題 「他人の評価依存型人間アレルギー症候群」
    • 秋山里子さん「人間アレルギー症候群」の研究
    • 「話すこと」からはじまる回復
  • 当事者研究」関連書籍

 

 以下は本書からの引用・要約を交えた「まとめ」です。

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生き延びるための読書計画 2019 — 労働・貧困・セクシュアリティ

「計画」と言っても適当です...

「生きづらさ」低減に向けた「生き延びるための読書」計画を立てました。計画といってもざっくりした大枠ですので、計画から逸れて他の分野に飛ぶかもしれません。

 あと、一年間でやれるかどうかは私の精神的な気分・体調と自由時間が関係しています。計画に縛られる人生なんて御免なので「とりあえずの目標」程度に考えております。つまり、適当です。

 (それと、今回の読書計画は以下で紹介する本は「すべて読破してやるぞ!」みたいな宣言ではありません。おそらく8割ほどは該当箇所を調べる程度です。)

適当教典

適当教典

 

 

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