おんざまゆげ

@スラッカーの思想

「子どもが欲しい」って当たり前?

 

 以前、山口智子さんが雑誌のインタビューで子どもを持たない人生を選択したことについて「一片の後悔もない」という発言をして話題になってました。

 

blogos.com

 

 「人それぞれの人生だから、別にいいじゃん」

 

 山口智子さんの人生だし、夫婦二人の人生だし。

 個人の人生の話と、政策的な話(出生率の低下=少子化=社会再生産への危惧)は、分けて考えることだと思います。後者を達成するために前者を統御することは不可能です。

 もし政策的な話をしたいのなら、ただ政策的な話をすればいいだけのこと。政策的問題(出生率の低下)を改善するために個人的な問題(子どもを産まない選択)に介入してその個人的な選択や考え方に対してあれこれ意見し説得しようとしても意味はないと思います。

 「子どもを産まない」と言っている女性(山口智子さん)にどうしても違和感をおぼえるようなときは、その個人的な違和感を「出生率が低下しているのは問題である」という政策的次元に即して「なぜ日本社会では女性が子どもを産み育てづらいのか」という問いへと変換して考えればいいだけです。

 つまり、出生率の低下が問題だと思うのなら、山口智子さん個人のライフスタイル(子どもを産まない、という生き方)を問題にするのではなく、政策的問題(たとえば、子どもの貧困、教育機関への公的支出の少なさ、育児休業取得率(男性)の低さ、長時間労働、女性の再就職、シングルマザーの貧困、保育サービスの充実など)を改善するにはどうすればいいかだけを考えばいいと思います。

 

 

「子どもは欲しくない」

 

下記は「オールアバウト」のアンケート調査です。

 

「子供は欲しくない」と答えた割合

・独身  男性   女性

 ・20…27.7%  18.8%

 ・30…38.7%  42.9%

 ・40…58.6%  70.3%

・既婚子供なし 男性   女性

 ・20…………4.1%       20.9%

 ・30…………23.5%  48.5%

 ・40…………66.7%     71.4%

 

 ・女性の方が割合が高い傾向がある

 ・40代になると独身・既婚に関係なく男女共に約6割以上が子供は欲しくないと回答。

 

corp.allabout.co.jp

 

 

 

「子どもが欲しい」って当たり前?

 

 僕は正直、「子どもが欲しい」と思ったことがありません。

 だから、なぜ子どもが欲しいのかよくわからないのですが、たぶん、「子どもが欲しい」という願望は「理屈を超えた何か」なんだと思っています。

 「どうして子どもが欲しいのか」の理由として考えられうる答えは、たとえば、社会的慣習や規範(子どもがいて当たり前だから・みんなそうしているから・子どもがいて一人前だから・女性は子どもを産むのが「自然」だから・それが女性の幸せだから)、生物の本能だから、自分の遺伝子を残したいから、好きな人の子どもが欲しいから、子どもがかわいいから、親に孫の顔を見せたいから、老後が大変だから、欲しい以前にできてしまった(セックスがしたかった)から等々が考えられます。

 

 「子どもが欲しい」という願望は、理屈だけで考えるとまったく理解できません。ぜんぜん当たり前じゃないと思います。

 たとえば、次のような意見(女性の)があったとします。

子どもなんて欲しくない。だって、子ども産むのって痛いし、育てるの大変で面倒くさいし、自分の時間なくなるし、カネかかるし、子どもがバカでブサイクだったら嫌だし、グレて家庭内暴力で殺されるかもしんないし、将来いつか死んじゃうから可哀想だし

 

 すべてまったくその通りだと思います。

 だから、普通に考えたら「子どもは欲しくない」と思う方が当たり前なのではないかと思うんです。

 まず、「痛いのは嫌だ」というのはすごく当たり前のことです。誰だって痛いのは嫌なはずです。だから、子どもが欲しくない理由として出産の痛みを上げる人がいても不思議じゃないと思います。でも、そういう人は殆どいない。

 たぶん、男は出産の痛みをスルーできるから関係がなく、実際に子どもを産んだ女性は「そのぐらい耐えて当然」と考えるので、「痛いのは嫌だ」と言ったりするのが傲慢でわがままを言っているような空気になるからだと思います。

 「育てるのが大変」「時間がなくなる」というのは、ちょっと想像しただけでわかります。

 「カネがかかる」というのは、子どもが欲しいか欲しくないかの問題ではなく、そもそも育てることが可能かどうかの条件にかかわる問題です。欲しいと思っても経済的問題から諦めざるをえない人が出てきます。

 「バカでブサイク」というのは、子どもというのは実際にどんな子どもが産まれてくるかはわからないということです。子どもは「招かれざる客だ」と言った人がいましたが、どんな子どもが産まれてきても親としてはすべてを承認するという覚悟がなければなりません。

 「グレて家庭内暴力」は子育てリスクの問題です。逆に親が子どもを虐待死させるケースもありえます。

 「将来いつか死ぬから可哀想」というのは、ほとんど語られていないことですが、子どもを産んだらその子どもは成長していつか病気か何かで必ず死にます。産んだ子どもは必ず絶対死ぬわけですが、死ぬのが分かっていながら産むというのは不合理で残酷ではないか、ということです。

 

 以上、「子どもが欲しい」と思っている人がそれらのことを知っていると仮定すると、「子どもが欲しい」という願望は、理屈を超えた「何か」です。

 それが何なのかは、僕にはまったく分かりません

 とにかく、人類がここまで続いてきたということは、その「何か」が次世代にそれなりに引き継がれてきたということは確かです。