おんざまゆげ

@スラッカーの思想

日本文学 110選 Part2(1946〜1970年)

日本文学にみる純愛百選』から「1946年〜1970年」までの作品を紹介します。

 

 

柳橋物語」 山本周五郎(やまもと・しゅうごろう) 1946

たったひとことの「口約束」がもとで、悲運においやられてしまった少女――相次ぐ“災い”に翻弄される江戸庶民の一途な愛の行方を描いた、せつない人情小説の傑作。

柳橋物語・むかしも今も

柳橋物語・むかしも今も

 

 

 

 

「青鬼の褌を洗う女」 坂口安吾(さかぐち・あんご) 1947

1947(昭和22)年10月5日発行の『愛と美』に発表。結婚も、祖国も、母も煩わしい。目の前の現実があるだけ。状況に流されているようで、何にも縛られず、何も怖れないオメカケ性。

青鬼の褌を洗う女
 

 

 

 

「斜陽」 太宰治(だざい・おさむ) 1947

かず子は、以前一度だけ会ったことのある上原への思いを胸に秘めていた。手紙でその思いを告白した後、かず子は「戦闘開始」と自らに宣言し、数年ぶりに上原に会いに行く。

斜陽

斜陽

 

 

 

 

「武蔵野夫人」 大岡昇平(おおおか・しょうへい) 1950

1950年刊行。当時さんかだった風俗小説を批判する意図と方法をもつと同時に、独歩の『武蔵野』の自然を、いわば復員兵の目で書き換える試みでもある。ベストセラーとなる。 

武蔵野夫人(新潮文庫)

武蔵野夫人(新潮文庫)

 

 

 

 

「挽歌」 原田康子(はらだ・やすこ) 1953

1953年同人誌「北海文学」に発表後、56年東都書房から刊行されベストセラーに。妻子ある男と、その妻の両方を愛してしまった娘の鋭い感性と苦悩を、丁寧な筆致で描き出した長篇。

挽歌 (新潮文庫)

挽歌 (新潮文庫)

 

 

 

 

「草の花」 福永武彦(ふくなが・たけひこ) 1954

1954年に刊行。困難な手術で死んだ男の遺した二冊のノートに綴られた、後輩への同性的な愛と、後にその妹への愛の試みとその終りを、愛ゆえの孤独に焦点を当て描く。

草の花(新潮文庫)

草の花(新潮文庫)

 

 

 

 

「おはん」 宇野千代(うの・ちよ) 1957

妻子を顧みず、勝ち気で積極的な芸者と暮らす男が、不平一つ言わずにひたすら彼を待つ妻ともよりを戻す。ずるずる二股を続けて生きるうちに悲劇が……。独特の方言による男の独白。

おはん・風の音 (中公文庫)

おはん・風の音 (中公文庫)

 

 

 

 

「小説智恵子抄」 佐藤春夫(さとう・はるお) 1957

高村光太郎が妻智恵子への愛を詠った詩集『智恵子抄』を元に高村夫妻と交際のあった佐藤春夫が小説化した。高村光太郎に批判的な面もある佐藤の描写が読みどころである。

【復刻本】佐藤春夫の「小説 智恵子抄」 (響林社文庫)
 

 

 

 

楢山節考」 深沢七郎(ふかざわ・しちろう) 1957

「姥捨て」伝承を用いた作品で、70歳をむかえる老女りんの、自ら進んで「山へ行く」ことを選ぶ凛とした生き方を描く。正宗白鳥に「人生永遠の書」と激賞される。

楢山節考 (新潮文庫)

楢山節考 (新潮文庫)

 

 

 

 

「暗い旅」 倉橋由美子(くらはし・ゆみこ) 1961

1961年刊行の書き下ろし長篇。ビュトールの『心変わり』をヒントに、「あなた」と指呼される主人公が、失踪した婚約者を京都にまで探す物語。錯綜する時間と意識の断片の処理が見事。

暗い旅(新潮文庫)

暗い旅(新潮文庫)

 

 

 

 

「死の棘」 島尾敏雄(しまお・としお) 1961

夫トシオの不倫を知った妻ミホは、自分でも抑えようのない悔しさと疑惑の思いに苛まれ、日々、激情の発作に見舞われる。家庭は、一時も気の休まらぬ修羅の場と化していく。

死の棘 (新潮文庫)

死の棘 (新潮文庫)

 

 

 

 

忍ぶ川」 三浦哲郎(みうら・てつお) 1961

作者と等身大の、東京の西北にある私立大学に通う「私」と、小さな料亭「忍ぶ川」の仲居である志乃との出会いからつつましやかな愛の成就までを描いた、戦後の恋愛小説の傑作。

忍ぶ川(新潮文庫)

忍ぶ川(新潮文庫)

 

 

 

 

憂国」 三島由紀夫(みしま・ゆきお) 1961

二・二六事件発生。武山中尉の親友たちは、新婚の彼にあえて声を掛けず、叛乱軍へ。友を討つのを厭い、中尉は切腹を決意。夫の壮絶な死を間近に見届け、妻麗子も後を追う。

花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

花ざかりの森・憂国―自選短編集 (新潮文庫)

 

 

 

 

「出口」 吉行淳之介(よしゆき・じゅんのすけ) 1962

昭和三七年に発表。「彼」が偶然に知った出口を閉ざした奇妙な鰻屋をめぐる作品。『贋食物誌』の作者ならではの主題だが、吉行文学の本質と趣向が余すところなく示されている。

娼婦の部屋・不意の出来事(新潮文庫)

娼婦の部屋・不意の出来事(新潮文庫)

 

 

 

 

「わたしが・棄てた・女」 遠藤周作(えんどう・しゅうさく)1963

1963年『主婦の友』に連載。一見通俗的だが、戦後インテリ学生の利己的な女性観、ハンセン病患者の苦しみを抽出し、神の沈黙を問いかける力作。何も持たない聖女のけなげな愛とはーー。

 

 

 

抱擁家族」 小島信夫(こじま・のぶお) 1965

妻の不倫や癌、マイホームなどをめぐる主人公の悲喜劇を通して、戦後の核家族の困窮ばかりか、日米の捩れた政治状況までをも浮き彫りにした戦後文学の記念碑的作品。

 

 

 

アメリカひじき」 野坂昭如(のさか・あきゆき) 1967

六七年に発表される。妻の知り合いのアメリカ人夫妻の来日を、戦災体験をもつ主人公がもてなしつつ、戦時・戦後のアメリカ体験の残像との間で揺れるユーモアとペーソスあふれる物語。

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

 

 

 

 

「銀ヤンマ」 唐十郎(から・じゅうろう) 1970

トンボの大群が舞う戦後の焼け野原、夢遊病の季節に少年が出会った「あの人」。唐十郎の、野性味溢れる「少女」の原像。 

謎の引越少女 (1970年)

謎の引越少女 (1970年)

 

 

唐十郎コレクション〈2〉銀ヤンマ・小説篇 (唐十郎コレクション 2 小説篇)

唐十郎コレクション〈2〉銀ヤンマ・小説篇 (唐十郎コレクション 2 小説篇)

 

 

 

 

以上。

Part3へつづく。

 

 

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