おんざまゆげ

@スラッカーの思想

日本文学 110選 Part3(1971〜1983年)

日本文学にみる純愛百選』から「1971年〜1983年」の作品を紹介します。

 

 

「どくろ杯」 金子光晴(かねこ・みつはる) 1971

1928年から32年に及ぶ、妻、森三千代を伴った、アジア、ヨーロッパ漂泊を回想した自伝三部作の第一作。上海、ジャカルタ等における夫婦の流浪を描く。

どくろ杯 (中公文庫)

どくろ杯 (中公文庫)

 

 

 

 

絵合せ」 庄野潤三(しょうの・じゅんぞう) 1971

1971年に刊行された同名の作品集の巻頭作。野間文芸賞を受賞。本屋さんでおまけにもらった「絵合せ」ゲームに興ずる家庭の姿を基調に、長女の嫁ぐ直前の日常が淡々と描かれている。

絵合せ (講談社文芸文庫)

絵合せ (講談社文芸文庫)

 

 

 

 

「婉という女」  大原富枝(おおはら・とみえ) 1972

それは文通から始まった。40年間の幽閉生活で唯一の外界との繋がり。空想の中でこそ花開いた奔放な愛の行方は? 男たちが命をかける政治や学問は、婉の熱い思いに応えてくれるのか?

婉という女・正妻 (講談社文芸文庫)

婉という女・正妻 (講談社文芸文庫)

 

 

 

 

「火宅の人」 檀一雄(だん・かずお) 1975

無頼作家の一雄は、新劇女優の恵子と事をおこして、妻のヨリ子と別居中。家族を思いながらも、「天然の旅情」に忠実な彼は、いつしか、元ホステスの葉子とともにーー。

火宅の人 上下巻セット (新潮文庫)

火宅の人 上下巻セット (新潮文庫)

 

 

 

 

「甘い蜜の部屋」 森茉莉(もり・まり) 1975

男たちは、花の蜜のように甘美で、からっぽの部屋のように空虚な、牟礼藻羅(むれ・もいら)に溺れてゆく。魔性の少女と、その虜囚となる男たちの織りなす、誘惑と惑乱の物語。 

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)

甘い蜜の部屋 (ちくま文庫)

 

 

 

 

「片恋」 後藤明生(ごとう・めいせい) 1976

過去を思い出す「わたし」を語り手とした連作集『夢かたり』(1976)所収の一篇。30年以上もの時を距てた過去と現在の往還が、鮮やかな光景とそこに重なる片思いを誘い出す。

 

 

 

「ある愛」 中村光夫(なかむら・みつお) 1976

大学の同級生が「兄嫁」になり、その親友は「兄の愛人」になった。そして「弟」は許されぬ愛を選んだ――。結婚をめぐる男女の感情の機微を、日記形式も巧みに描いていく。

ある愛 (1976年)

ある愛 (1976年)

 

 

 

 

枯木灘」 中上健次(なかがみ・けんじ) 1977

三人の男との間に六人の子をもうけたフサ。その子である秋幸は26歳の物静かな土方で、複雑な家族関係を大きな体の中に引き受けながら、実父龍造へ敵愾心を募らせていく。

新装新版 枯木灘 (河出文庫)

新装新版 枯木灘 (河出文庫)

 

 

 

 

「時雨の記」 中里恒子(なかざと・つねこ) 1977

40代の寡婦と50代の実業家との、生涯一度のひそやかな純愛。大磯の山沿いに侘び住まいする多江にやすらぎを見出した壬生は、ふたり住むべく新たな閑居を作る夢を抱くが…。

時雨の記(新装版) (文春文庫)

時雨の記(新装版) (文春文庫)

 

 

 

 

「悲しいだけ」  藤枝静男(ふじえだ・しずお) 1977

35年間にわたって病魔に侵され続けた妻が、全身衰弱の後、息を引き取る。葬儀の後、「妻の死が悲しいだけ」という思いが、物質のように実際に存在しているのを感じてくる。

悲しいだけ 欣求浄土 (講談社文芸文庫)
 

 

 

 

「離婚」 色川武大(いろかわ・たけひろ) 1978

フリーライターのぼくは、離婚したあげく、晴れて「元・女房」を愛人にすることができたーー。男と女のふしぎな愛のかたちを軽妙に描いた、第79回直木賞受賞作品。

離婚

離婚

 

 

 

 

「春の鐘」 立原正秋(たちはら・まさあき) 1978

奈良の美術館に単身赴任中の鳴海六平太は、ふとした偶然から、妻・範子の不倫現場を目撃! 信楽の陶工の娘・多恵との同棲をはじめた彼は、遠くのほうからまいあさ幽かにきこえてくる、ありえない鐘の音で目をさますようになり…。 

春の鐘 (上巻) (新潮文庫)

春の鐘 (上巻) (新潮文庫)

 

 

 

 

「情事」 森瑤子(もり・ようこ) 1978

1978年、主婦業に疲れ、悩んだ末に憑かれたように書いたデビュー作。「情事」というタイトルにふさわしく、終るべくして終るはかない恋。第二回すばる文学賞受賞。

情事 (集英社文庫)

情事 (集英社文庫)

 

 

 

 

「新選 鈴木志郞康詩集」 鈴木志郞康(すずき・しろうやす) 1980

プアプア詩の賑やかな猥雑さから一転、新妻「マリ」の登場する静謐な調子の詩を集め、使用語とトーンを絞った詩集『やわらかい闇の夢』は、志郎康詩の大きな変貌を示した。

 

 

 

「あ・うん」 向田邦子(むこうだ・くにこ) 1980

昭和十年代の東京を舞台に、口に出さずとも微妙な呼吸でいたわりあう、三人の男女の「相思相愛」—— 親の世代の愛を垣間見て成長する、向田邦子の自伝的な作品世界。

あ・うん (文春文庫 (277‐2))

あ・うん (文春文庫 (277‐2))

 

 

 

 

「くずれる水」 金井美恵子(かない・みえこ) 1981

雨に濡れたことから発熱し、打ち合わせ先で気を失う。目覚めるとホテルの一室。面倒を見てくれる若い女と恋に落ち、ふたりで出奔。父のいる町へ行くものの、彼女は消える。 

ピクニック、その他の短篇 (講談社文芸文庫)

ピクニック、その他の短篇 (講談社文芸文庫)

 

 

 

 

「金色の象」 宮内勝典(みやうち・かつすけ) 1981

1981年刊。野間文芸新人賞を受賞。妻との出会いから、出生間もなくして逝った最初の子の遺骨を「私」の故郷の墓に納めるまでを描く。彼岸への想いに溢れた珠玉の傑作。

金色の象 (河出文庫)

金色の象 (河出文庫)

 

 

 

 

「錦繡」  宮本輝(みやもと・てる) 1982

偶然によって再会した元夫の荒んだ姿を目にし、妻であった女は長い手紙を書き始めた。錦繍の名の通り、美しい文体で織り上げられていく、それぞれの人生の軌跡と希望の物語。

錦繍 (新潮文庫)

錦繍 (新潮文庫)

 

 

 

 

「新しい人よ眼ざめよ」 大江健三郎(おおえ・けんざぶろう) 1983

1983年刊行。息子の光さんと等身大のイーヨーと作家と思しき「僕」との新たな関係を、ブレイクの詩を通して、自ら問い、求める連作小説。イーヨーの科白が独自の強度を発揮している。

新しい人よ眼ざめよ (講談社文芸文庫)
 

 

 

 

「ねむり姫」 澁澤龍彦(しぶさわ・たつひこ) 1983

晩年の澁澤が古今東西の典籍を撚り合わせて作りあげた綺譚集。流麗絢爛かつ遊び心を忘れない筆遣いが、人間と化生を、男と女を、不可思議な舞台のうえで交錯させる。

 

 

 

「槿」 古井由吉(ふるい・よしきち) 1983

献血所で知り合った井手伊子と関係する杉尾は、旧友萱島の通夜で再会したその妹の國子とも関わっていく。かつて杉尾に抱かれたというのは、國子の妄想なのか、思い誤りか……。

槿 (講談社文芸文庫)

槿 (講談社文芸文庫)

 

 

 

 

「兎とよばれた女」 矢川澄子(やがわ・すみこ) 1983

才能ある男の理想的な妻であること、非凡な女が家父長制の下で生きることの苦しさをめぐって、かぐや姫論や、哲学的寓話、祖霊たちの声など様々な語り口の変奏曲を綴る。

兎とよばれた女 (ちくま文庫)

兎とよばれた女 (ちくま文庫)

 

 

 

 

以上。

Part4へつづく。 

 

 

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