おんざまゆげ

@スラッカーの思想

日本文学 110選 Part4(1987〜1999年)

日本文学にみる純愛百選』から「1987年〜1999年」の作品を紹介します。

 

 

「どんなご縁で」 耕治人(こう・はると) 1987

長きにわたり夫を助けてきた80歳の老妻が、老人性痴呆症を示し始める。世話をするのは、これもまた80歳の老夫。経済的余裕もなければ子もない、壮絶な最晩年がはじまる。

 

 

 

ナチュラル・ウーマン」 松浦理英子(まつうら・りえこ) 1987

「私」と三人の女性との関係性を描く短篇連作。それまで女性作家があまり扱ってこなかったレスビアニスムというテーマを明晰かつ新鮮な文体で描き、読者の蒙を啓く。

ナチュラル・ウーマン (河出文庫)

ナチュラル・ウーマン (河出文庫)

 

 

 

 

ノルウェイの森」 村上春樹(むらかみ・はるき) 1987

軽妙なウィットに富んだ文体で現代社会における若者の喪失感を巧みに描いた本作は、幅広い世代から熱狂的な支持を得て、三〇〇万部の売り上げを記録した。

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

ノルウェイの森 上 (講談社文庫)

 

 

 

 

立原道造詩集」 立原道造(たちはら・みちぞう) 1988

生前刊行の詩集は『萱草に寄す』『暁と夕の詩』。ともに、高原での淡い物想いを描くソネット10篇を収める。角川書店版全集があるが、岩波文庫版でも代表作は一望できる。

立原道造詩集 日本の詩人

立原道造詩集 日本の詩人

 

 

 

 

「紋白蝶」 村上龍(むらかみ・りゅう) 1988

88年刊行の短篇集『トパーズ』所収。八〇年代後半の、バブル経済下での風俗産業に従事する女性を主人公に、金銭と交換の性愛からこぼれ落ちる愛のかたちを描いて秀逸。

トパーズ (角川文庫)

トパーズ (角川文庫)

 

 

 

 

「キッチン」 よしもとばなな(よしもと・ばなな) 1988

世界三〇数ヶ国に諸作品が翻訳され、村上春樹とともに、いま海外で最も読まれている現代日本人作家の一人である、よしもとばななのデビュー作。

キッチン

キッチン

 

 

 

 

少年アリス」 長野まゆみ(ながの・まゆみ) 1989

1989年、第25回文藝賞受賞作品。季節の変わり目に二人の少年が体験した、ガラスのように繊細で透明な冒険。深夜の学校で繰り広げられる授業とはーー?

少年アリス (河出文庫)

少年アリス (河出文庫)

 

 

 

 

「幻想の未来」 筒井康隆(つつい・やすたか) 1990

人類の滅亡以降の変異した生物たちの愛の歴史。知的生命のあらゆる意識が継承され、どんなささやかな存在の善も悪も呑み込まれ、生命の継承のため、さまざまな愛が求められる壮大な物語。

幻想の未来 (角川文庫 緑 305-1)

幻想の未来 (角川文庫 緑 305-1)

 

 

 

 

「母よ」 青野聰(あおの・そう) 1991

記憶にない実母を、墓の彼方から呼び寄せようとする語り手の痛切な声。見えない母に向かって、別居している妻とのあいだに生まれた幼い息子の成長ぶりを報告する。

母よ (講談社文芸文庫)

母よ (講談社文芸文庫)

 

 

 

 

タマリンドの木」 池澤夏樹(いけざわ・なつき) 1991

1991年刊行の、現在までのところ池澤夏樹唯一の恋愛小説。タイのカンボジア難民キャンプで働く日本人女性と東京のサラリーマンの恋の行く末を描く。

タマリンドの木 (impala e-books)

タマリンドの木 (impala e-books)

 

 

 

 

「女に」 谷川俊太郎(たにかわ・しゅんたろう) 1991

生まれる以前からの深い絆で結ばれた男と女。詩集『女に』では、このふたりの生涯の関わりを、男性側の視点で追い続けていく。最長七桁の短い詩と、佐野洋子によるペン画との見開き構成。

女に

女に

 

 

 

 

 「エンドレス・ワルツ」 稲葉真弓(いなば・まゆみ) 1992

1970年代に薬で夭折したジャズ・アルトサックス奏者、阿部薫と個性的な女優・小説家、鈴木いづみの伝記的作品。研ぎ澄まされた神経で音・言葉を求め、自らを追いつめてしまう青春。

新装版 エンドレス・ワルツ

新装版 エンドレス・ワルツ

 

 

 

 

「ラスト・ワルツ」 盛田隆二(もりた・りゅうじ) 1993

「夜よりも長い夢」と「一九七三年の新宿と犬の首輪」の二篇をもとに書き改めた作品で、実質的な処女作に当たる。「実体験に根ざした切実なモチーフ」が織り込まれているという。

ラスト・ワルツ (角川文庫)

ラスト・ワルツ (角川文庫)

 

 

 

 

天使の卵」 村山由佳(むらやま・ゆか) 1994

美大志望の予備校生・歩太は、八歳年上の精神科医・春妃に出会い、激しい恋に落ちる。しかし春妃が、歩太の恋人・夏姫の実姉であるために悲劇が始まる。

 

   

 

「ラブレター」 岩井俊二(いわい・しゅんじ) 1995

死んだ婚約者に手紙を出してみると、なんと返事が……。婚約者と同姓同名の女性こそ、じつは、死んだ彼の真の愛の対象だったのでは、と気づいてく博子。

ラヴレター

ラヴレター

 

 

 

 

「韓素音の月」 茅野裕城子(ちの・ゆきこ) 1995

1995年すばる文学賞受賞。現代中国人作家、王朔によれば「この世にはきっと別の生き方が存在すると思って探しに出かけていく一人の変質狂」の物語(中国版解説より)。

韓素音(ハン・スーイン)の月 (集英社文庫)

韓素音(ハン・スーイン)の月 (集英社文庫)

 

 

 

 

「イノセントワールド」 桜井亜美(さくらい・あみ) 1996

1996年発表後、大きな反響を呼んだデビュー作。世の欺瞞を憎み、あらゆるタブーに挑戦する女子高生を描く。カリスマ・パーティ主催者の集団レイプなど、社会的大事件も先取り。

イノセントワールド (幻冬舎文庫)

イノセントワールド (幻冬舎文庫)

 

 

 

 

「残響・コーリング」 保坂和志(ほさか・かずし) 1997

それぞれに孤独な日常の、距離をへだてた交歓。語り口と叙述作法の探求が、別様のコミュニケーションの可能性をめぐる思考へと開かれていく二篇の小説。 

残響 (中公文庫)

残響 (中公文庫)

 

 

 

 

 「赤目四十八瀧心中未遂車谷長吉(くるまたに・ちょうきつ)1998

中流生活への嫌悪からすべてを捨てた男が、場末の裏社会に「蓮の花」を見つける。行き場のない愛を。どん底の町と心象風景がかえって美しい幻想譚となる。1998年直木賞受賞。

赤目四十八瀧心中未遂 (文春文庫)

赤目四十八瀧心中未遂 (文春文庫)

 

 

 

 

夫婦茶碗」 町田康(まちだ・こう) 1998

金がない、仕事もない、うるおいすらない―― 無為の日々から一発逆転する秘策は、子供相手のメルヘン執筆だった! 人生の茶柱を立てるべく悪戦苦闘する〈わたし〉とその妻の物語。日本文藝最強の堕天使による、パンクな人情小説。

夫婦茶碗

夫婦茶碗

 

 

  

 

「やけっぱちのアリス」 島田雅彦(しまだ・まさひこ) 1999

アリゾナから「般若学園」に来たキコク子女アリス。たちまち、愛と嫉妬の的になり、心に家に問題だらけの生徒たちに一気に点火。愛する蔦麻呂とともに急転直下、駆け落ちへ。

やけっぱちのアリス (新潮文庫)

やけっぱちのアリス (新潮文庫)

 

 

 

 

「一月物語」 平野啓一郎(ひらの・けいいちろう) 1999

審美主義的な言葉と生の探求が泉鏡花三島由紀夫に比される「現代の神話」。吉野の山奥に迷い込んだ青年の夢に、夜毎現われる全裸の美女の後姿。エロティックな至福の瞬間とは——。

日蝕・一月物語(新潮文庫)

日蝕・一月物語(新潮文庫)

 

 

 

 以上。

Part5へつづく。

 

 

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