急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。
同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、ある極秘の依頼を引き受けた。暗殺任務と思しき詳細不明の作戦。事前に明かされたのは、「人類全体に奉仕する仕事」ということだけだった。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入するが…。(amazonより)
絶対おすすめ文句なしの作品
高野和明さんの長編ミステリー。2011年刊行。
「このミステリーがすごい!」で1位に輝き、山田風太郎賞、日本推理作家協会賞を受賞。直木賞候補にも選ばれました。(ちなみに直木賞に関しては、3.11の自粛ムードの煽りをくったのではないか、という説があります。)
読後感は「スッキリ」
確かにいろんな人が絶賛しているように、面白い。
読み出すとやめられません。
エンタメ小説としては最高クラスです。
「ひねくれ者」は"バッド"展開を期待する
もともとハッピーエンドな小説はあまり好きではないので、なんであんなにスッキリした終わり方をしたのか。その点だけが気になりました。
期待していたのは『続 猿の惑星』的な破局的ラスト。あの身も蓋もないアイロニカルなバッドエンドは一生記憶に残るはず。
だから続猿のようなシンプルな絶望で終わってほしかったのですが、こんな終り方をしたらたぶん読者は相当離れるでしょうね…。
人間 vs.超人間
結局のところ、この小説の構図は『人間の「獣性」を剥き出しにしてくる敵』対『人間を超越する力』ということになっています。
しかし人間の「獣性」とは、つまるところ「男性の獣性」でしかなく、だからこの小説は男性性を批判していながら最初から最後まで男性的に描かれてしまっているのです。
従ってラストは、母性的なものによる終息か、それが無理なら続猿的な破局ラスト(男は滅びる運命!)しかないと思ったのですが、「超人間」という異ジャンルの到来によって都合よく乗り切ってしまう点が少々残念でした。