あらすじ
「紀子の食卓」「愛のむきだし」の園子温監督が、当時マスコミを賑わせた“埼玉愛犬家殺人事件”をベースに、ふとしたはずみから極悪非道な男に取り込まれ、後戻りの出来ない深い闇の世界へと落ちていく主人公の姿を、ブラックユーモアを散りばめつつ鮮烈に描き出す衝撃の問題作。主演は「ちゃんと伝える」の吹越満、共演にTV「湯けむりスナイパー」のでんでん。
2009年1月14日。小さな熱帯魚屋を経営する社本信行とその妻・妙子は、万引で捕まった娘・美津子を引き取りにスーパーへと向かう。すると、その場に居合わせた店長の知り合いという村田幸雄の取りなしで、美津子は何とか無罪放免に。村田も熱帯魚屋のオーナーだったが、規模は社本の店とは比べものにならないほど大きなものだった。
人の良さそうな村田は、美津子を自分の店で預かってもいいと提案、継母である妙子との不仲に頭を痛めていた社本は、その申し出を受入れることに。さらに村田は、高級熱帯魚の繁殖という儲け話にも社本を誘い込む。その口の上手さと押しの強さを前に、いつの間にか村田のペースに呑み込まれてしまう社本だったが…。<allcinema>
「クライム・バイオレンス・スプラッター」映画
鬼才 園子温 監督作品 。2011年公開。
「埼玉愛犬家殺人事件」がベースになっているらしいが、かなり換骨奪胎されている。
というか、100%監督のオリジナルといっていい。
この映画を観る人はグロ映像満載なので要注意。死体処理の場面がかなり詳細に描かれており、鼻歌を歌いながら楽しそうに死体を切り刻んだりしている…。
(鬼才! 園子温監督)
狂気の「でんでん」覚醒する「吹越」
でんでんが狂気のオヤジを演じている。
そして後半、吹越満が“鬼畜”に覚醒。
鬼畜になった吹越が最後に叫ぶ!
人生ってのはなぁ! 痛いんだよ!
そう、人生は痛い。
しかし、痛みは人に伝わらない。
この映画は、何とかそこを突破しようと試みる。痛みを忌避し、無痛化した社会のなかで安穏と暮らしている無痛化人間(覚醒前の吹越のような男)に、痛烈なショックを与える。
熱帯魚店を経営するでんでん。
狂気のおじさんを熱演したでんでん。
一見そのへんのパチンコ屋にいそうな普通のおじさんに見えるが…
その普通さのリアルが恐怖に変わる。
覚醒前の吹越。弱々しい頼りなげな男。
覚醒後の吹越。
「人生ってのはなぁ! 痛いんだよぉ!」と叫ぶ吹越。
このシーンで注目してほしいのは「痛いんだよぉ!」と言うときの抑揚のつけ方。
吹越は青森県出身のため「方言」が出たのか(方言説)、それとも吹越の考え抜かれた演技なのか(演技説)、あるいは監督の演出なのか(演出説)……。
日本映画史に残る名シーンなだけに謎は深まる。