読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

おんざまゆげ

"感受性マイノリティ男子"が綴る日々の雑記・雑感… 読書、映画、アニメの感想。

山田ズーニー『「働きたくない」というあなたへ』/就活生に向けたエール!

ほぼ日刊イトイ新聞」の連載「おとなの小論文教室。」を書籍化したもの。

 主に読者とのメールのやりとりで構成されており、大学の就活セミナー講師で経験したエピソードをまじえながら、「働くことの意味」について読者と一緒に考えていくスタイル。

 

 

 著者はあらかじめ読者対象をしぼっている。(タイトルの『「働きたくない」というあなたへ』の「あなた」があらかじめ限定されている。)

《 「働きたくないあなたへ」といっても、これは、全国の働きたくない人を働かせようというシリーズではありません。あくまでもここでは、

 1.学生など「未社会人」で、
 2.働きたくないと初めからどこかで「捨てた」構えで、
 3.いま「就職活動」をしている(結局、就職はする)

 ごく一部の若者のことをさします。 》

 

 次に、著者の結論的な部分。

《 … 人間は社会的な生き物である、と私は思う。無自覚であっても、どんな形でも、人は、社会とつながろうとする。社会とつながる、というときに、いちばんわかりやすいのが、「仕事」という「へその緒」を通して、自分と社会をダイレクトにつなげる、というやり方だ。仕事をすることで、自分から社会に「貢献」して、その対価である「報酬」を得る。… 》

 

 最後にこの本の残念な部分をひとつ。

 この本には、若者の貧困、就職難や非正規労働、ワーキングプア格差社会、過労死、終身雇用・年功序列の崩壊、新卒一括採用 … といった問題群にはいっさい言及されていない。つまり、社会の制度やシステムの問題は全面スルーされているので、そのぶんだけ精神論に傾いている。(単行本2010年ではそれらに関しては触れられていない)

 すべての若者がディーセントな仕事に就けるわけではないのに一律に「働こう」と呼びかけるのは意味がないどころか暴力である。だから著者はあらかじめ読者対象を絞ったのであろう。

たとえば、帯の宣伝文。

《 いままで誰も教えてくれなかった「働くってそういうことだったのか!」が、しっくりと温かく、あなたの胸に染み通る。働く勇気が湧いてくる! 社会に羽ばたくための自分らしい一歩が踏み出せる! 》

なんという精神論!

まさに「就活セミナー」向けの本である。*1

 

news.mynavi.jp

 

*1:「就活」とは…。

「就活」とは「就職活動」のことではなく「入社活動」のことであり、「職探し」ではなく「会社探し」のことである。従って学生は、「職業」に適しているか(職業能力)ではなく、「会社」に適しているか(我が社のOJTに耐えられるか=OJTを明るく楽しく前向きにやってくれるか=人間力?=どこでも・何でも・誰とでも・何時間でも働く能力=潜在的職務遂行能力=職能)で判断される。

 それに対してハロワは「職業」を紹介しており、決して「会社」を紹介しているわけではない。よって日本の労働市場は三つ(新卒市場・転職市場・時給市場に分裂している転職市場や時給市場は職業安定法最低賃金法による法的規定にもとづくが新卒市場は法的規定のない「慣行」(日本的雇用慣行)である。

 軍隊や宗教団体や一部の体育会系には独自のエートス(同じ服装・独特の喋り方・規則正しい動きや所作)があるが、就活生にも独特のエートス(同じ服装・ハキハキした喋り方・規則正しい動きや所作・マナー)がある。このような就活生のエートスと毎年4月始めに行われる「入社式」(イニシエーション)は日本のオリジナルな労働文化である。一説によると「新しい社会人」とは入社式に参加した「新しい会社員」のことをさし、入社式とは学校共同体から会社共同体への移行儀式(イニシエーション)として機能していると言われている。

(参照「若者と労働 「入社」の仕組みから解きほぐす」)

広告を非表示にする