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現代社会はどこに向かうか《生きるリアリティの崩壊と再生》(FUKUOKA U ブックレット1) (FUKUOKA Uブックレット)
- 作者: 見田宗介
- 出版社/メーカー: 弦書房
- 発売日: 2012/07/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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以下、目次
二つの無差別殺人事件
未来の喪失
縮小する世代間ギャップ
「まなざしの不在」の地獄
大爆発期としての近代
変曲点としての現代
GMの君臨と破綻
マーケットの無限化
大量生産・大量消費・大量廃棄
フィクションの時代
せめぎ合う二つのベクトル
征服から共存へ
リアリティへの飢え
新たな時代に向けて
以下、引用。
秋葉原無差別殺傷事件について
——そうですね。前半でちょっとお話した加藤智弘、あの犯罪の一番のポイントというか彼のターニングポイントというのは、やっぱり自分の部屋に帰って、自分は誰からも必要とされていない人間だと思ったところだと思います。人生を振り返ってみて、自分は誰からも必要とされていないと。
エリクソンというアメリカの心理学者、アメリカの心理学会の会長もした人ですけど、彼の有名な言葉に「mature man need to be needed」というのがあります。つまり、成熟した人間は必要とされることを必要とする、ということを言っていて、それはたいへん僕は大事なことだと思う。人から必要とされることは人間にとって強い欲望であるし、根本的な欲望であると思うのです。そこから逆に解決の出口を見いだすことができるのではないかというふうに考えているわけです。(p54)
「まなざしの不在の地獄」に苦しむ人たちのミクロな処方箋
福岡——では、最後になりますが、最も多かった質問ですけれども、要するにリストカットする少女といった、そういう「まなざしの不在の地獄」に苦しむ人たちのミクロな処方箋としてはどういうものがあるのか、切実にそれを求めている人たちがけっこういると思いますが、先生はどう思われますか。
見田——それはさっきもちょっと触れましたけれども、何かの形でリアルな他者との接触があって、かつ人から必要とされるということがどんなに素敵なことかということを体験するようなチャンスがないとだめだと思います。
多くの場合、それを言う前にいろんな被害者意識がありますから、それに対して、逆にこちらが与えるということを最初はやらないと、自分が与えることの喜びというのはなかなか分からないだろうと思うのです。ですから、何かのリアルな他者との接触を、そしてそれが必要とするとかされるとかというようなことを、その人その人に応じて具体的にやっていかないと、いくらお説教をしたりしても、それは無理だろうと思います。(p59)
リアルな他者との接触によって、「人から必要とされている」という実感を得る。
これが「まなざしの不在の地獄」に苦しむ人たちへの処方箋です。
今の日本社会、いわゆる「空気」を読むことを強いられる同調型社会では、なかなかむずかしい処方箋ではないか・・・。
読後にそう思った。