おんざまゆげ

@スラッカーの思想

今月の興味ありがちな文庫10冊/2017年10月新刊

 10月に発売された新刊チェック(文庫)です。

 選定ルールは、

 ●「文庫」に限定(基本的にラノベ系は除外)

 ●「今すぐ購入したい!」とまではいかない「興味ありがち」な10冊精選

 

 

10月の興味ありがちな新刊(文庫)10冊

 

1.『経済と人間の旅』宇沢弘文 日経ビジネス人文庫

  2014年出版の文庫化。宇沢さん唯一の自伝です。文庫化されて購入しやすくなりました。『社会的共通資本』の概念で有名ですが、とにかく宇沢さんはすごい人です。経済学に興味のない方もぜひ読むべき一冊だと思われます。

 

社会的共通資本 (岩波新書)

社会的共通資本 (岩波新書)

 

  

 

 

2.『死者を弔うということ』(サラ・マレー 草思社文庫)

文庫 死者を弔うということ: 世界の各地に葬送のかたちを訪ねる (草思社文庫)

文庫 死者を弔うということ: 世界の各地に葬送のかたちを訪ねる (草思社文庫)

 

  2014年出版の文庫化。各国で行われている「葬送の文化」について書かれた一冊です。著者が訪れた国は、イラン、バリ、シチリア、ガーナ、香港、フィリピン、カルカッタチェコ、メキシコなど。「弔い」に興味がある方はぜひチェックを。

 

 

 

3.『蔵書の苦しみ』岡崎武志 知恵の森文庫)

蔵書の苦しみ (知恵の森文庫 t お 10-3)

蔵書の苦しみ (知恵の森文庫 t お 10-3)

 

  2013年刊の文庫化。著者はフリーライターで書評家の方です。2万冊を超える蔵書に苦しめられる…というドキュメント。2万冊となると、おそらく家族の方も大変だと思います。谷川俊太郎さんなどは父親(哲学者の谷川徹三が亡くなられた後、残された膨大な蔵書(トラック数台分)をすべて古書店に売り払ったそうです。ただ売るだけでも残された家族は相当苦労するみたいですね。

 

 

 

4.『幸福論』ラッセル 角川ソフィア文庫 

幸福論 (角川ソフィア文庫)

幸福論 (角川ソフィア文庫)

 

  長らく絶版状態にあった角川文庫のラッセル『幸福論』(堀秀彦訳)の復刊です。ラッセルの『幸福論』には岩波文庫(安藤貞雄訳)もあります。11月のEテレ100分 de 名著』はラッセルの『幸福論』のようですが、おろらくそこに合わせて復刊されたと思われます。これを機会に読んでみるのもよいですね。

 

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

ラッセル幸福論 (岩波文庫)

 

 

ラッセル『幸福論』 2017年11月 (100分 de 名著)

ラッセル『幸福論』 2017年11月 (100分 de 名著)

 

 

 

  

5.『政治の本質』ヴェーバー/シュミット 中公文庫プレミアム)

  中公文庫の「古典名訳再発見」シリーズの第二弾です。といってもあまりに地味すぎて「そんなシリーズあったのか?」と思ってしまいます。今回は社会学者の清水幾太郎さんが訳された「職業としての政治」ヴェーバーと「政治的なるものの概念」(シュミット)が収録されています。ちなみに第一弾では、大江健三郎の師匠でもあった渡辺一夫さんの訳したトーマス・マン『五つの証言』です。

 

 

 

 

6.『記号論(吉田夏彦 ちくま学芸文庫 

記号論 (ちくま学芸文庫 ヨ 16-2)

記号論 (ちくま学芸文庫 ヨ 16-2)

 

 以前に放送大学の教科書として出版されたものを文庫化。1月には『論理と哲学の世界』も文庫化されました。吉田夏彦さんの本は初学者にも分かりやすいように書かれていると思いますので、論理学の基礎を知りたい方は吉田さんから入るのもいいかもしれません。

 

論理と哲学の世界 (ちくま学芸文庫)

論理と哲学の世界 (ちくま学芸文庫)

 

 

 

 

7.『戊辰戦争 あくなき薩長の謀略』(星亮一 文芸社文庫)

  著者は福島在住の歴史作家。たくさんの歴史書を書かれていますが、なかでも「会津の歴史」に関係した本が有名です。会津藩の「薩長許すまじ!」に応えてくれる作品がたくさんあります。

 

 

 

8.『ナマケモノはなぜ「怠け者」なのか』池田清彦 新潮文庫

 『生物学の「ウソ」と「ホント」最新生物学88の謎』の改題・文庫化。気分転換に軽く読めそうな生物学エッセイです。100のテーマを収めているらしいので、物知り雑学大好き人間の方は面白いかも…。

 

 

 

9.『少女ミステリー倶楽部』江戸川乱歩ほか 光文社文庫)

少女ミステリー倶楽部 (光文社文庫)

少女ミステリー倶楽部 (光文社文庫)

 

 「少女」が主役のミステリーだけを集めたもの。編集者の「ミステリー文学資料館」は過去にもユニークな作品を出しています。たとえば「古本」が題材になったミステリーだけを集めた『古書ミステリー倶楽部』、「電話」が題材の『電話ミステリー倶楽部』など。

 

古書ミステリー倶楽部 (光文社文庫)

古書ミステリー倶楽部 (光文社文庫)

 

 

電話ミステリー倶楽部 (光文社文庫)

電話ミステリー倶楽部 (光文社文庫)

 

 

 

 

10.『道徳を基礎づける 孟子 VS カント、ルソー、ニーチェ(F・ジュリアン 講談社学術文庫

道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)

道徳を基礎づける 孟子vs.カント、ルソー、ニーチェ (講談社学術文庫)

 

  東浩紀さんがツイートで絶賛していた本が文庫で復刊。2002年に講談社現代新書から出版されて以来、ずっと絶版状態が続いていた見捨てられた名著のようです。西洋思想だけではなく孟子に言及しているのが面白いと思います。