おんざまゆげ

@スラッカーの思想

倫理

「小人閑居して不善をなす」──人間の自由と悪への傾き

「とうとう我らの時代がきた!」 そう歓喜したのはわたしが中学二年の夏休み、三年生が部活の大会に破れたときのことだった。しかし、顧問の先生は言った。「お前ら三年に自由な夏休みを与えてしまうと何をしでかすかわからない。だから秋の大会にエントリー…

「自己啓発的サバイバリズム」の時代—「無理ゲー社会」と自己啓発の親和性—

最近、『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』(みすず書房,2022年)を読んでいて、はたと気づかされたことがある。それはその本の原注 p16(第二章 脚注60)に書かれていたのだが、概ね次のような指摘である。社会が生きづらくなればなるほど自己…

怠惰と堕落のちがい——「怠惰の倫理」は堕落主義を拒絶する

このへんではっきりさせておきたいから書く。わたしは堕落主義者に与したくない。怠惰は推奨するが堕落は拒絶する。 堕落とは自分の利益や幸福のことしか考えない非政治的でシニカルな心の習慣である。一方、怠惰(スラッカー)とは堕落傾向を阻止するために勤…

社会問題を「教養」と捉えるひとたち

ブログを読んだりするのが昔から好きで、はてなブログでは書評系ブロガーなどを毎日チェックしている。 そのなかで「公務員」という肩書きのブログがわたしの読書傾向とほぼ合致するので、ある時期までそのブログを頻繁に注意深く読んでいた。 だが、ある日…

「感じない官僚的人間」になりたくない

ぼくは「知ることよりも感じることのほうが大切だ」という命題(レイチェル・カーソンの言葉)に賛同している。これは真理だと思っている。知識より感情。何かを知ることは重要なことだけど、そこに何らかの思いや感情がなければ知識はたんなる上辺だけの知識…

「良心なき善良な人」/スノーデンとアイヒマンのはざまで

“リョウシン”ちがい 先生:「その問題は君の“良心”に従って決めるしかない…。私がとやかく言えるような問題じゃないよ。」 生徒:「そんな… 私はもう“両親”なんかに従いたくありません…。ずっと我慢してきたんですから…。」 上司:「君はそれでいいと思うの…

加藤尚武『災害論 — 安全性工学への疑問 —』/「復興」には義務を超えた倫理が必要

哲学者 加藤尚武さんの「災害」(主に原発事故)に関する本。 災害論―安全性工学への疑問― (世界思想社現代哲学叢書) 作者: 加藤尚武 出版社/メーカー: 世界思想社 発売日: 2011/10/18 メディア: 単行本(ソフトカバー) 購入: 1人 クリック: 27回 この商品…