おんざまゆげ

@スラッカーの思想

「メメント・モリ」を生きるには?

希死念慮が習慣化してくると「人生は生きるに値するか」というセンサーが脳のなかに埋め込まれ、それがことあるごとに日常的に作動するようになる。ほとんどの場合、常に「値しない」という反応が出力され続け、生命体であるかぎりすべての人間はあと数十年…

反出生主義に訣別!——わたしたちは個々人の人生の内部から「生まれてきてよかった」と思えるような人生をめざすほかない

デイヴィッド・ベネターの誕生否定と反出生主義 「非存在者」(未だ存在していない者)をこの世に存在させることは道徳的に許されない悪である。したがってすべての人間は子どもを生むべきではない。反出生主義者のデイヴィッド・ベネターは概ねそのようなこ…

本当に「救われない」と覚悟したとき、逆に救われる気がする —— 死・意味・価値について

「死」について考えるとき、いつもふたつの感慨にとらわれます。ひとつは、「人間はいつか必ず死ぬ。人生は有限である。残された時間は少ない。なのに、自分は今、とてもくだらないことをしている。こんなことをしていていいのだろうか...」という感慨。もう…

白石一文『私という運命について』/「ほんとうに不幸なのは出産できない女性」?

2005年に出版された白石一文さんの長編小説。2014年にはWOWOWにてドラマ化もされました。 【内容】 大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀は、元恋人・佐藤康の結婚式の招待状に出欠の返事を出しかねていた。康との別離後、彼の母親から手紙を…

「生まれてこない方がよかった」/デイヴィッド・ベネターの誕生否定と反出生主義

今回はデイヴィッド・ベネターの主著『生まれてこない方が良かった —— 存在してしまうことの害悪』で展開されている「反出生主義」について考えてみたい。 反出生主義 「子どもを生むべきではない」 反出生主義と出生主義 ベネターの立場 「客観主義・功利主…

「私が語れること」について。

世間的に大きな事件があって犯人が逮捕されたとき、「A容疑者」という報道がなされ、テレビなどのメディアではそのA容疑者についてああだこうだと言い立てるようになる。 〈私が語れること〉 私はある時から、何かについて語れることがあるとしたら、それは…

「いじめ自殺」について/「学校は死にたくなるような気持ちを抱えてまで行かなければならない場所ではない」

「魔の夏休み明け」 おそらく「魔の週末明け(月曜日の憂鬱)」の比ではない「魔の夏休み明け」が近づいています。子ども(特に小学生)にとって夏休みとは「お祭り期間(ハレ)」のようなもの。あの憂鬱な日常には戻りたくない。しかも「学校的日常」なんか…

『強いられる死 自殺者三万人超の実相』/自殺者は本質的には減ることはない

強いられる死 ---自殺者三万人超の実相 (河出文庫) 作者: 斎藤貴男 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2012/10/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る

石井光太『遺体 〜震災、津波の果てに〜』/復興とは家屋や道路や防波堤を修復して済む話ではない

生き延びた者は、膨大な死者を前に、 立ち止まることすら許されなかった—— 遺体安置所をめぐる極限状態に迫る、 壮絶なるルポルタージュ! 2011年3月11日。 40000人が住む三陸の港町釜石を襲った津波は、 死者・行方不明者1100人もの犠牲を出した。 各施設を…

小出裕章『隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ』/「エネルギー中毒社会」からの脱却

忘れ去られる「原発問題」 隠される原子力・核の真実―原子力の専門家が原発に反対するわけ 作者: 小出裕章 出版社/メーカー: 創史社 発売日: 2011/01 メディア: 単行本 購入: 39人 クリック: 919回 この商品を含むブログ (115件) を見る

京極夏彦『死ねばいいのに』/去る者は日々に疎し… 誰も「あなた」を覚えていない。

死んだ女のことを教えてくれないか。三箇月前、自宅マンションで何者かによって殺された鹿島亜佐美。突如現れた無礼な男が、彼女のことを私に尋ねる。私は彼女の何を知っていたというのだろう。交わらない会話の先に浮かび上がるのは、人とは思えぬほどの心…

平野啓一郎『空白を満たしなさい』/「分人」という生き方

ある日、勤務先の会社の会議室で目覚めた土屋徹生は、自分が3年前に死亡したことを知らされる。死因は「自殺」。しかし、愛する妻と幼い息子に恵まれ、新商品の開発に情熱を注いでいた当時の自分に自殺する理由など考えられない。 じつは自分は殺されたので…

小川勝己『彼岸の奴隷』/「社会派の鬼畜」小説

手と首を斬り落とされた女の死体が発見された。捜査一課の蒲生信昭は、所轄の刑事・和泉龍一と組み、捜査を開始する。だが、被害者の娘、大河内涼を見たとたん、和泉の様子がおかしくなる。和泉を疑い出した蒲生は、彼の過去を調べるが……。 血と暴力に彩られ…

遠藤周作『沈黙』/あの人は沈黙していたのではなかった…

島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制のあくまで厳しい日本に潜入したポルトガル司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる……。神の存在、背教の心理、西洋と日…

【映画】『イージー・ライダー』/若かりしジャック・ニコルソンに逢える!

アメリカの魂を、良心を求めた男たち!どこにも見つけられなかった男たち!鮮烈な感覚で叩きつける男の詩! マリファナ密売で儲けた大金をタンクに隠し、真のアメリカを求めてオートバイで放浪の旅に出る二人のヒッピーを描いたアメリカン・ニュー・シネマの…

「人生の意味」と「人生の不条理」ー死についての雑記(3)了

「あなたはなぜ、生きるのか」 「あなたはなぜ、生まれてきたのか」 「あなたはなぜ、死ななければならないのか」 「あなたはなぜ、死ななければならないのに生きるのか」 「あなたはなぜ、死ななければならないのに生まれてきたのか」 そのような問いかけや…

死はなぜ悪なのか?― 「死」についての雑記(2)

なぜ、死んでしまうことは「悪い」ことなんでしょうか。 これは明らかに馬鹿げた問いであるように思います。 死んでしまうことが悪いことなのは、あらためて問うまでもなく自明であると思われます。しかし、そこで想定されているのは二人称(あなた)の死や…

「死」と人称性——「死」についての雑記(1)

1.死と人称性 一人称(私)、二人称(あなた)、三人称(他人・彼)。 これらの人称性の違いによって死の意味が変わってきます。 では、どのような違いがあるのか。 以下ではその違いを考えてみます。

【映画】『冷たい熱帯魚』/狂気の「でんでん」、覚醒する「吹越」。そして人生は痛い!

あらすじ 「紀子の食卓」「愛のむきだし」の園子温監督が、当時マスコミを賑わせた“埼玉愛犬家殺人事件”をベースに、ふとしたはずみから極悪非道な男に取り込まれ、後戻りの出来ない深い闇の世界へと落ちていく主人公の姿を、ブラックユーモアを散りばめつつ…

高野和明『ジェノサイド』/人間 vs.超人間

急死したはずの父親から送られてきた一通のメール。それがすべての発端だった。創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、その不可解な遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。 …

白石一文『僕のなかの壊れていない部分』/「死」や「生」について思索する恋愛小説

出版社に勤務する29歳の「僕」は3人の女性と同時に関係を持ちながら、その誰とも深い繋がりを結ぼうとしない。一方で、自宅には鍵をかけず、行き場のない若者2人を自由に出入りさせていた。常に、生まれてこなければよかった、という絶望感を抱く「僕」は驚…

伊藤計劃『ハーモニー <harmony/> 』/魂のために、魂のない世界を作るー逆説の救済思想

「大災禍」と呼ばれる世界規模の混沌から復興した世界。かつて起きた「大災禍」の反動で、世界は極端な健康志向と社会の調和を重んじた、超高度医療社会へと移行していた。 そんな優しさと慈愛に満ちたまがい物の世界に、立ち向かう術を日々考えている少女が…

「死刑制度」の問題点 〜 国家の自由裁量と「秘密主義」〜

www.bengo4.com 死刑制度はいずれ廃止すべきだと思いますが、ただいきなり廃止を目指すのは不可能だと思っています。やはりイギリスでやったように、死刑執行の停止(モラトリアム)をまずは行って、段階的に廃止に向かうのが現実的だと考えます。 イギリス…

『MONSTER』(浦沢直樹)/心に残ったセリフ

MONSTER 完全版(ビッグコミックススペシャル) 全9巻セット 作者: 浦沢直樹 出版社/メーカー: 小学館 発売日: 2008/12/08 メディア: コミック クリック: 5回 この商品を含むブログ (6件) を見る