本書で斎藤貴男さんは、自殺防止に取り組まれている方々や遺族関係者などを直接取材することによって、ナマの現場から現代日本社会の病理である自殺の社会的背景に迫っている。 *1
労働や多重債務や倒産による自殺、学校でのいじめ自殺、障害者自立支援法による自殺などが取り上げられている。
世界で屈指の自殺大国である日本は、以前から自殺は個人的な問題だとされる傾向があった。しかし、NPO法人ライフリンク代表の清水康之さんなどをはじめとした自殺防止活動に取り組んでこられた方々の尽力によって、06年に「自殺対策基本法」が成立し、自殺は社会的・経済的な構造に起因した問題であることがここにおいてやっと位置づけられた。
ライフリンクの清水さんは言う。
… 一年間に3万人以上の方々が自殺しています。毎日、毎日、ざっと90人ぐらいずつ。それが10年も続いてる。交通事故死の6倍です。東京マラソンの参加者は約3万2400人でしたから、ほとんど同じですね。
… 彼ら一人ひとりにゼッケン番号があるように、自殺した方々にもそれぞれ、かけがえのない人生がありました。私たちはついつい自殺者が増えた、減ったという言い方をしてしまいがちですが、自殺者は本質的に減ることがありません。3万3000人が自殺した次の年が3万人になったからって、差し引き3000人が生き返ってくるわけではないんです。
ただ増えていくだけ。しかも、一人が亡くなると、だいたい4、5人のご家族がご遺族になります。3万人が自殺すれば12万人から15万人。こちらも決して減りません。
自殺者は本質的には減ることはない…。
読んでいてすごく憂鬱になった。
だが、一方で清水さんのような方々が存在していることを知った。
自ら死を選ばざるをえないような状況を、そこへ追い込んでいく日本社会を、
どうやったら変えられるのか。
このすごく重たい問いを常に考え続けなければならないと思った。