おんざまゆげ

"感受性マイノリティ男子"がつづる日々の雑記・雑感… 読書、映画、アニメの感想など。

さだまさし・フェミニズム・天皇制 —— 山口百恵『秋桜』について

秋桜』(コスモス)とは…?

 1977年にリリースされた山口百恵の19枚目のシングル。作詞・作曲はさだまさし

 

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 歌詞はこちらのサイトで見ることができます。

 ・秋桜 山口百恵 歌詞情報 - うたまっぷ 歌詞無料検索

 

 この曲を聴いてあなたはどう感じるでしょうか…。

 はじめて聴いたときの印象は「なんだか寂しく悲しい曲だなぁ…」という感じでした。名曲だと思います。

 

さだまさし=敵?

 今でも結婚式で流れたり歌われたりしているのでしょうか? 

 しかし、一方では『秋桜』は一部のフェミニストからはかなり評判の悪い歌でもあります。フェミニストから言わせると、この歌は「嫁ぐ女性の別れ」を表現しており、このような「女=結婚=嫁ぐ=別離=永遠の別れ」みたいな物語は「家制度」が前提になってはじめて成立するものである、と…。よって『秋桜』は女性にとっての一つの「悲劇」を表現したどこまでもネガティブで同意できない歌であるフェミニストにとっては)

秋桜』がリリースされた二年後、さだまさしはあの有名な『関白宣言』をリリースしている! この一件により、さだまさしフェミニストにとって「要注意人物」として認定されたのであります。

 

秋桜』は「お母さん、ありがとう!」の歌?

 動画サイトのコメント欄を拝見するかぎりでは、まったくもってそのような捉え方(フェミニストのような見方)をしている人は皆無でした。この曲を聴いてコメントを残す人たちは「母を思い出す」とか「お母さん今までありがとう」(母への感謝)みたいなものがとても多いのです。(その他には自分が経験した“マリッジブルー”を思い出す、というのもありました。)

 今では『秋桜』は単に「母を想う歌」という感じになっているのかもしれません。現に『秋桜』は映画『日本一短い「母」への手紙』の主題歌に採用されたこともあります。

 

でも、やっぱり『秋桜』は古い?

 フェミニストの言いぶんは措いておくとしても、『秋桜』が表現している世界観は現代のリアリティからしてみるとかなり古風な印象を受けることも確かです。

 娘が結婚するので家を出ていく(だから引っ越しをする)…。要はただそれだけのことを描いているだけです。なのに、何だかすごく大げさ...。「嫁ぐ」という意味合いが現代のリアルからすると非常に重々しい(重すぎる!)。もはや母と娘はもう二度と会えない、といった感じなのです。

 結婚は喜ばしいことのはずなのに、なぜにこんなにも寂しく悲しい旋律なのでしょう。おそらく「結婚」が「嫁ぐ」という言葉に換言されると、結婚することが喜ばしいことではなく「親との悲しい別れ」に重点が置かれるからだと思います。
秋桜』は別れを悲しむ歌になっているのですが、別れの理由が結婚(=嫁ぐ)なのです。このように、結婚が「親との別れ」と観念されてはじめてこの歌の切実さが理解できるのだと思います。

 今では、女性が生まれ育った家を出ていくきっかけは結婚よりも進学や就職の方が多いのではないでしょうか。だから、現代では結婚が「嫁ぐ=別れ」と観念されづらい時代になっていると思います。むしろ現代よりも、戦国時代の大名の娘が異国の大名の息子と結婚させられる(政略結婚)みたいなシチュエーションの方が『秋桜』の歌詞は容易に理解できると思います。『秋桜』の世界観は現代よりも戦国時代の方にかぎりなく近いわけです。

 

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秋桜』と天皇

 確かに『秋桜』は現代社会とマッチしない。結婚が別れの歌にはなりにくい。しかし、『秋桜』の世界観が現代でも100パーセントそのまま適合可能な領域がただ一つだけ残されています。それは「一般女性が皇族の男性と結婚して皇室に入る」ときです。

秋桜』の歌詞に出てくる「明日嫁ぐ私」の「私」の部分が「皇后 美智子さま」とか「皇太子妃 雅子さま」だったら…と仮定して想像してみると、『秋桜』はまぎれもなく現代の歌として蘇ります。

 一般女性が皇族男性と結婚すること…。これ以上に重い「嫁ぐ」はないでしょう。そして、「皇室に入る」ということがいったい何を意味するのか。これはほとんど「永遠の別れ」に近いのではないか(なぜなら「一般人」には二度と戻れないから)
 雅子さまはいったいどういう気持ちで結婚したのでしょうか…。おそらく『秋桜』で描かれているような「母との別離」を体験したはずです。そう考えると胸が痛みます。

 『秋桜』の世界観は確かに古めかしいと思います。女性にとって結婚はもはや「嫁ぐ」ことではない。だから結婚が別れと観念されづらいことは良いことかもしれません。その点『秋桜』は時代錯誤な歌になってしまっています。

 でも、この国に天皇制があるかぎり『秋桜』は永遠にリアルな歌であり続けることでしょう。

 *ちなみに『秋桜』は「日本の歌百選」に選ばれています。「日本の歌百選」とは《 文化庁日本PTA全国協議会が、親子で長く歌い継いでほしい童謡・唱歌や歌謡曲といった抒情歌や愛唱歌の歌101曲を選定したもの。 》