「計画」と言っても適当です...
「生きづらさ」低減に向けた「生き延びるための読書」計画を立てました。計画といってもざっくりした大枠ですので、計画から逸れて他の分野に飛ぶかもしれません。
あと、一年間でやれるかどうかは私の精神的な気分・体調と自由時間が関係しています。計画に縛られる人生なんて御免なので「とりあえずの目標」程度に考えております。つまり、適当です。
(それと、今回の読書計画は以下で紹介する本は「すべて読破してやるぞ!」みたいな宣言ではありません。おそらく8割ほどは該当箇所を調べる程度です。)
- 「生きづらさ」に対するアプローチの仕方
- 「労働・貧困」と「セクシュアリティ」
- 「セクシュアリティ」関連
- (1) 「恋愛結婚イデオロギー」に関するもの
- (2) セクシュアル・マイノリティ
- (3) 「労働・貧困・セクシュアリティ」——共通しているテーマ
- 脚注
「生きづらさ」に対するアプローチの仕方
私の考え方、特に「生きづらさ」に関する方法論的なアプローチについては以下の記事で詳細に述べています。
その後『「すべての生が無条件に承認される社会」へ向けて』の中で「生きづらさ」に関する見取り図をご紹介いたしました。今でも以下の図のように考えています。
「セクシュアリティ」に関しては主にアイデンティティの承認問題、「労働・貧困」に関しては「貧しさと寂しさ」(物質レベルと承認レベル)に跨った領域横断的な問題です。「ジェンダー」に関しては「セクシュアリティ」と「労働・貧困」の二つに関与していると考えられます。
その他に「すべての生が無条件に承認される社会」に向けて重要だと思われる問題領域が二つあります。一つは世界の貧困問題、もう一つは動物に対する搾取の問題(アニマルライツ)です。「物理的に離れた地域に住んでいる他者」と「種を越えた人間以外の動物」に対しても道徳的配慮の対象として考えなければならないと思っています。
「労働・貧困」と「セクシュアリティ」
とりあえず、「労働・貧困」に関する問題と「セクシュアリティ」に関する問題の二つを中心に考えています。
当初は知りうる限りの文献情報をすべて紹介しようと思っていましたが、それをやるとすごく大変(時間的にも分量的にも...)なので最小限に絞って紹介することにしました。
「労働・貧困」問題ーマルクス・アーレント・ポランニー
これに関しては二つの軸があります。
(1) 労働の本質論 → 労働とは何か
(2) 日本企業のブラック労働 → ワーキングプアなどの貧困問題
(2)に関してはたくさんの文献(新書など)が出版されているので、そういう本を読めばわりと簡単に知ることができるかと思います。問題なのは(1)の方です。おそらく(1)を突き詰めれば(2)の問題点についてはおのずと見えてくるはずです。よって、今年の一年は(1)を中心にやっていきたいと思っています。
以下の思想家三人を中心に考えています。裏テーマは「資本主義社会」です。*1
・ポランニー →「大転換」とその他の論文
しかしながら、主著の「古典読解」などはしません。時間的にも頭脳的にも不可能です。まずは上記の三人の主著に関する入門書や解説書を中心に読んでいきたい。次に、深掘りしたい部分だけ主著にあたるという「邪道」で行きます。
- 作者: カールマルクス,Karl Marx,今村仁司,鈴木直,三島憲一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/01/01
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- 作者: ハンナアレント,Hannah Arendt,志水速雄
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
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- 作者: カール・ポラニー,野口建彦,栖原学
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「労働・貧困」問題の文献(その他)
「労働・貧困」関係の主な文献をあげておきます。
・労働と思想
・近代の労働観
・だれのための仕事
だれのための仕事――労働vs余暇を超えて (講談社学術文庫)
- 作者: 鷲田清一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/12/13
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・私たちはなぜ働くのか
・なぜ私たちは、喜んで“資本主義の奴隷"になるのか?
・仕事の裏切り なぜ、私たちは働くのか
・日本人はいつから働きすぎになったのか
・仕事と日本人
・子どもの貧困
・弱者の居場所がない社会
弱者の居場所がない社会――貧困・格差と社会的包摂 (講談社現代新書)
- 作者: 阿部彩
- 出版社/メーカー: 講談社
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「セクシュアリティ」関連
軸としては以下の二つです。
(2) セクシュアル・マイノリティ問題
実はこの問題も先ほどの「労働・貧困」問題と関係しています。正確に言うなら「通底している」と言ったほうがいいかもしれません。なぜなら、恋愛も結婚もセクシュアリティも「資本主義社会における...」という前提が欠かせないからです。
私たちがイメージしている「恋愛」(経験可能な現実的実際的な恋愛)は「文学が描く普遍的恋愛」ではなく「資本主義社会における恋愛」です。「普遍的恋愛」なんて文学の世界ではありえても現実社会には存在しないでしょう。
当然、結婚もしかりです。なぜ、シングルマザーは最貧困に陥るのか...。これは「資本主義社会における結婚」が性差別(ジェンダー不平等)に傾いているからです。
なぜ、セクシュアル・マイノリティは「マイノリティ」なのか...。これも「資本主義社会における恋愛」が強制的に異性愛主義(ある人にとっては差別的な構造)になっているからです。
現段階のあらゆる社会問題には「資本主義社会における...」という前提条件が濃密に関与しています。だからマルクスは今でも偉大でありフェミニズム(ジェンダー理論)にとっても欠かせない存在なのです。...ということで、マルクス主義フェミニズムの「上野千鶴子」(特に初期の業績)は欠かせません。
(1)と(2)が関係する領域から派生的に生まれてくるのが「男らしさ」(マスキュリニティ)の生きづらさ問題です。この問題が無視できないのは「私が男だから」ということも関係していますが、「女性」に関してはフェミニズムの分厚い蓄積があるのに対し、男らしさ問題に関しては今でも手薄なところがあります。「男は特権階級なのだから...」ということで今までずっと放置されてきたわけです。*2
そこで、セクシュアリティ関連の読書計画としては以下のようになりました。「労働・貧困」問題にも通底しているテーマ群に関しては別途(3)に分類しておきます。
(1) 「恋愛結婚イデオロギー」に関するもの
恋愛結婚の歴史
・恋愛制度、束縛の2500年史
恋愛制度、束縛の2500年史 古代ギリシャ・ローマから現代日本まで (光文社新書)
- 作者: 鈴木隆美
- 出版社/メーカー: 光文社
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・恋愛結婚は何をもたらしたか
・「恋愛学」講義
- 作者: スーザン・S.ヘンドリック,クライドヘンドリック,Susan S. Hendrick,Clyde Hendrik,斉藤勇,奥田大三
- 出版社/メーカー: 金子書房
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・情熱としての愛——親密さのコード化
- 作者: ニクラスルーマン,Niklas Luhmann,佐藤勉,村中知子
- 出版社/メーカー: 木鐸社
- 発売日: 2005/05/01
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結婚制度(近代家族制度)
・「まだ結婚しないの?」に答える理論武装
・シングル単位の恋愛・家族論―ジェンダーフリーな関係へ
シングル単位の恋愛・家族論―ジェンダー・フリーな関係へ (SEKAISHISO SEMINAR)
- 作者: 伊田広行
- 出版社/メーカー: 世界思想社
- 発売日: 1998/04
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・家族、積みすぎた方舟―ポスト平等主義のフェミニズム法理論
- 作者: マーサ・アルバートソンファインマン,Martha Albertson Fineman,上野千鶴子,穐田信子,速水葉子
- 出版社/メーカー: 学陽書房
- 発売日: 2003/02
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・家族 (ワードマップ)
上野千鶴子とその他マルフェミ関連
家父長制と資本制―マルクス主義フェミニズムの地平 (岩波現代文庫)
- 作者: 上野千鶴子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/05/15
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・近代家族の成立と終焉
・生き延びるための思想―ジェンダー平等の罠
- 作者: ナタリー・J.ソコロフ,江原由美子,岩田知子,竹中千香子,藤崎宏子,紙谷雅子
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 1987/12
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・資本主義と性差別―ジェンダー的公正をめざして
(2) セクシュアル・マイノリティ
男らしさ問題
・男性学入門
・「男らしさ」のゆくえ―男性文化の文化社会学
・「男らしさ」という神話―現代男性の危機を読み解く
「男らしさ」という神話―現代男性の危機を読み解く (NHK人間講座 (2003年8月~9月期))
- 作者: 伊藤公雄,日本放送協会,日本放送出版協会
- 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
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・男であることの困難―恋愛・日本・ジェンダー
・男らしさという病?―ポップ・カルチャーの新・男性学
・「男らしさ」の快楽―ポピュラー文化からみたその実態
・イーストウッドの男たち―マスキュリニティの表象分析
- 作者: ドゥルシラコーネル,Drucilla Cornell,吉良貴之,仲正昌樹
- 出版社/メーカー: 御茶の水書房
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・性的不能者裁判―男の性の知られざる歴史ドラマ
・非モテの品格 男にとって「弱さ」とは何か
・日本の童貞
・決定版 感じない男
セクシュアリティ関連(クィアなど)
・現代思想 1997年5月 臨時増刊号 総特集=レズビアン/ゲイ・スタディーズ
・クイア・スタディーズ (思考のフロンティア)
・ゲイ・スタディーズ
・プライベート・ゲイ・ライフ ポスト恋愛論
・「レズビアン」である、ということ
・百合のリアル
・女たちの時間―レズビアン短編小説集
女たちの時間―レズビアン短編小説集 (平凡社ライブラリー (274))
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・クィア・サイエンス―同性愛をめぐる科学言説の変遷
- 作者: サイモンルベイ,伏見憲明,Simon Le Vay,玉野真路,岡田太郎
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・関係する女 所有する男
・性愛論
・親密性の変容
- 作者: アンソニー・ギデンズ,松尾精文、松川昭子
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・性への自由/性からの自由 ポルノグラフィの歴史社会学
性への自由・性からの自由―ポルノグラフィの歴史社会学 (クリティーク叢書)
- 作者: 赤川学
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・フーコー・コレクション〈5〉性・真理
- 作者: ミシェルフーコー,小林康夫,松浦寿輝,石田英敬,Michel Foucault
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ジェンダー・フェミニズム
・新しい女性の創造
- 作者: Betty Friedan,ベティフリーダン,三浦冨美子
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・性の政治学
- 作者: ロバート・W.コンネル,R.W. Connell,森重雄,加藤隆雄,菊地栄治,越智康詞
- 出版社/メーカー: 三交社
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・ジェンダー化される身体
・ジェンダー秩序
・正義・ジェンダー・家族
・正義・家族・法の構造変換―リベラル・フェミニズムの再定位
・ケアの倫理からはじめる正義論―支えあう平等
・ケアの絆―自律神話を超えて
- 作者: マーサ・アルバートソンファインマン,Martha Albertson Fineman,穐田信子,速水葉子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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・境界を攪乱する―性・生・暴力
・倫理学とフェミニズム―ジェンダー、身体、他者をめぐるジレンマ
倫理学とフェミニズム―ジェンダー、身体、他者をめぐるジレンマ
- 作者: 金井淑子
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
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・異なっていられる社会を
(3) 「労働・貧困・セクシュアリティ」——共通しているテーマ
・生活保障のガバナンス ジェンダーとお金の流れで読み解く
生活保障のガバナンス -- ジェンダーとお金の流れで読み解く
- 作者: 大沢真理
- 出版社/メーカー: 有斐閣
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・いまこそ考えたい 生活保障のしくみ
・働く女子の運命
・仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか
仕事と家族 日本はなぜ働きづらく、産みにくいのか (中公新書)
- 作者: 筒井淳也
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・女性活躍後進国ニッポン
脚注
*1: アーレントやポランニーの重要性を私に気づかせてくれたのは『生きるための思想』を運営しておられる「はるちゃん」氏です。本当に感謝している次第です。
はるちゃんのブログは当ブログ開設以来ずっと参考にさせてもらっています。はるちゃんはブログでは主に理論的な考察を、ツイッターでは主に活動的実践をされておられる理論と実践を兼ね備えたアクティビストです。これからもはるちゃんの活動を見習っていきたいと思っております。以下は、はるちゃんのアーレントとポランニーに関する記事です。(その他にも参考になる情報がたくさんあります。)
・「世界」をつくる(『アレント入門』より) - 生きるための思想
...フェミニストの上野千鶴子は「(性的弱者は)コミュニケーション・スキルを磨いていただくしかない」「マスターベーションしながら死んでいただければいいと思います。冷たいでしょうか」と言ったことがある(上野千鶴子・宮台真司「メディア・セックス・家族」『論座』朝日新聞,1998年8月号)
(非モテの品格,p128,2016)より
上野はそれ以降もこの痛烈なスタンスをずっと維持し続けていましたが、ある時期からその応じ方が少し変わります。上野の「男らしさ問題」に対するテンプレ対応は「マスターベーションしながら死ねばいい」という痛烈な言明から「“だめ連”があるからダメ男はそういう場所に行けばいい」という応じ方に変化しました。結局、上野からしてみたら「男の生きづらさ問題なんて男が解決しろよ...女の問題は女が解決してきたんだから...(私にそれを聞くなよ!)」ということなのでしょう。