おんざまゆげ

@スラッカーの思想

「逆錘」——「毒親問題」解決法

 アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が7月2日で完結した。もしかしたら第3シーズンもあるのかもしれないが、一応、物語的には全24話で完結している。ふだん、ガンダム・シリーズはほとんど観ないのだが、この『水星の魔女』はガンダム・シリーズ初の主人公が女性で学園が舞台ということもあって、注目していた。わたしがこのアニメで面白いと思ったのは、子の親がことごとく「毒親」だという点であった。

 主人公の女性(スレッタ)をはじめてとして、子どもたちは毒親に翻弄されるのだが、最終的には同世代の仲間たちに包摂され、親からの愛情不足を仲間たちからの愛情によって補われる(=回復する)という展開になっている。とくに、周囲から迫害されている「地球寮」の仲間たちのいい感じの連帯感が最高だった。

 このアニメを観てつくづく思ったのは、やはり親からの愛情に恵まれなかったひとたちは、友達や恋人たちからの愛情によって回復する以外に毒親問題の解決法はないということである

 

 

 友達や恋人をつくるためには、それはそれで困難を呈するだろう。しかし、親からの〈愛情資本〉の格差を公的に支援する制度は今のところ想定もされていないし、そんな制度が可能かどうかもわかっていない。いまのところ仲間や友達や恋人をつくる方法は、個人の試行錯誤でどうにかするしかないのである。

 毒親問題は人間関係の問題だ。親からの愛情不足は、他者からの愛情によって補うしかない。これ以外に毒親問題を解決する方法はないとおもうのだ。精神科医中井久夫が言うように「逆錘」が必要なのである。

(「逆錘」(ぎゃく-すい)とは秤の反対の皿に載せる錘(おもり)。外傷性の記憶の苦痛からの回復を加速するためには、よい人との新しい出会いをはじめとする好ましい体験の積み重ねが必要である。これを中井は比喩的に「逆錘」とよぶ。)