おんざまゆげ

@スラッカーの思想

赤木智弘『若者を見殺しにする国』/「人が死ななくても変われる社会」はいつ来るのか

論座」(2007年1月号)に寄稿した論文「『丸山眞男』をひっぱたきたい~31歳フリーター。希望は、戦争。」収録の文庫版。 

若者を見殺しにする国

若者を見殺しにする国

 

 

 「左翼知識人」の欺瞞を暴く

 あらゆる格差(経済・雇用・教育など)が固定化されてしまった現在の日本社会において、その固定化を打破し流動性を高め格差是正(平等化)を図ることができる方法はもはや「戦争」しかないのではないか——。

 この過激な主張は各界に大きな反響を呼び起こした。それと同時に、著者はこの論文に応答した「左翼知識人」たちの大いなる「欺瞞」を暴くことにみごとに成功。「31歳フリーター」の現実をまったく無視する左翼知識人の倒錯した姿が著者を媒介にしてあらわになった。「希望は戦争」論文の最大の功績はまさにこの点にあったと言える。

 3.11以降、著者は次のように述べる。
 

… かつて「希望は戦争」と言った私にとって、大震災は希望となったのか。その問いには「いいえ」と答えるほかないでしょう。…

… しかし、私は「希望は戦争」と言った時に、決して戦争そのものを欲していたわけではなかったように、当然、この大震災を欲しているわけではありません。ましてや、人が死ぬことを望んでいるわけでもありません。そうではなく、多くの人が死ななければ社会が変わらないとしか思いようがない日本社会の状況に幻滅していたのです。そしてそれは今も変わりません。…

… 私は「希望は戦争」において、人が死ぬことでしか変わることを期待できない社会を批判しました。では、私が望むことはなにか。それはこの社会が、人が死ななくても変われる社会であることです。我々は平時の時こそ、この社会を変えて行かなければならないのです。もし、災害が来ることでしか社会を変えられないとしたら、それは人間の敗北です。人間の生み出してきた、文化や科学、そしてなにより人間の知性の敗北なのです。(「文庫版あとがき」より抜粋) 

 

 赤木氏は次の記事で当時を振り返り、今も何も変わっていない、と述べる。

 

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