「そのように批判してばかりいるあなたは実際になにをやったんですか? 現場をしらないあなたになにがわかるんですか?」── 書き言葉や話し言葉による言説によって批判ばかりしているひとにはその論法はおなじみとなっている。「おまえは批判ばかりしてなに…
資本主義は概ね(1)「賃労働で所得を獲得できないと生活できない」という世界をつくったうえで、 (2)「賃労働者から搾取する」ことによって成り立っている。マルクスは搾取される賃労働者の階級を革命主体と捉えたが、逆に「働かない者たち」(ルンペン・プロ…
1985年8月12日、日本航空123便が群馬県上野村の山中「御巣鷹山」に墜落した。死者520名(生存者4名)。航空機事故では最悪レベルの惨事だった。(日本航空123便墜落事故) この事故にかんしては様々な憶測(陰謀論を含めたもの)がある。事故原因がいまだにはっき…
「とうとう我らの時代がきた!」 そう歓喜したのはわたしが中学二年の夏休み、三年生が部活の大会に破れたときのことだった。しかし、顧問の先生は言った。「お前ら三年に自由な夏休みを与えてしまうと何をしでかすかわからない。だから秋の大会にエントリー…
心理学者のマズローが提出した「欲求階層モデル」。高校の「現代社会」のような科目にも登場するような有名な図であるが、あらためてこのモデルを考えてみると恐ろしいほどの「無理ゲー」になっていることに気づいた。 詳細はマズローの主著である『人間性の…
ドミナントな「青春」という呪縛語を破壊しよう! 「青春」という言葉はありふれている。すごく嘘くさい言葉だ。わたしが中学生や高校生のとき、まさかその〈いま・現在〉を「青春時代」だなんて思ったことは一度もなかった。あまりにもつらすぎて早く過ぎ去…
江戸時代、日本では「虫売り」という商売があった。スズムシやキリギリスなどのような独特の鳴き声を発する昆虫を観賞用として売るのである。虫の鳴き声を鑑賞する文化は海外ではめずらしく、そういう文化のない国では虫の鳴き声はたんなる「雑音」としてし…
アニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』が7月2日で完結した。もしかしたら第3シーズンもあるのかもしれないが、一応、物語的には全24話で完結している。ふだん、ガンダム・シリーズはほとんど観ないのだが、この『水星の魔女』はガンダム・シリーズ初の主人…
個人的な嬉しい出来事をSNSなどで不特定多数に向けて発信することがある。たとえば「大学に合格したよ」とか「結婚しました」とか「子どもが産まれました」等々...。こういう喜ばしい出来事の発表には「おめでとう」という祝福メッセージがあつまる。 しかし…
最近、『ハッピークラシー――「幸せ」願望に支配される日常』(みすず書房,2022年)を読んでいて、はたと気づかされたことがある。それはその本の原注 p16(第二章 脚注60)に書かれていたのだが、概ね次のような指摘である。社会が生きづらくなればなるほど自己…
このへんではっきりさせておきたいから書く。わたしは堕落主義者に与したくない。怠惰は推奨するが堕落は拒絶する。 堕落とは自分の利益や幸福のことしか考えない非政治的でシニカルな心の習慣である。一方、怠惰(スラッカー)とは堕落傾向を阻止するために勤…
『あなたを大切にしてくれない場所にいてはいけない』。そしてそれが『人が生きる上で、一番くらいに大切なことだと思う』 「あなたを大切にしてくれない場所にいてはいけない」というメッセージ。の巻(雨宮処凛) 日本の「勤労」という概念をそれなりに調…
イラク戦争の最中、米軍の爆撃により運命を変えられたふたりの子ども。偶然にもアリという同じ名前を持ち、同じ病院で治療を受けたふたりの子どもの惨劇を通して、イラク戦争が罪のない一般のイラク人にもたらした辛い現実を描いたドキュメンタリー。 バグダ…
ブログを読んだりするのが昔から好きで、はてなブログでは書評系ブロガーなどを毎日チェックしている。 そのなかで「公務員」という肩書きのブログがわたしの読書傾向とほぼ合致するので、ある時期までそのブログを頻繁に注意深く読んでいた。 だが、ある日…
希死念慮が習慣化してくると「人生は生きるに値するか」というセンサーが脳のなかに埋め込まれ、それがことあるごとに日常的に作動するようになる。ほとんどの場合、常に「値しない」という反応が出力され続け、生命体であるかぎりすべての人間はあと数十年…
社会学者の上野千鶴子さんは下記のボーヴォワール『老い』を解説している本のなかで「老いる姿を隠すべきではない」と言っている。すごく重要な指摘だとおもう。 ボーヴォワール『老い』 2021年7月 (NHK100分de名著) 作者:上野 千鶴子 NHK出版 Amazon 社会の…
デイヴィッド・ベネターの誕生否定と反出生主義 「非存在者」(未だ存在していない者)をこの世に存在させることは道徳的に許されない悪である。したがってすべての人間は子どもを生むべきではない。反出生主義者のデイヴィッド・ベネターは概ねそのようなこ…
主観主義の立場に立つかぎり、生む側と生まれる側の非対称性は厳として存在する。しかし、ここから〈生む側には「生む/生まない」の選択肢があるが、生まれる側には「生まれる/生まれない」の選択肢はない。生まれる側は「生まれたい」と思ったわけではな…
「ずるさ」を許せない! 「日本人は行列にちゃんと並ぶすばらしい国民である!」 外国から称賛される「日本人すごいぞ」論の定番になっている。たしかに割り込みはずるい。ずるはよくないのだ。 しかし、裏返せば日本は「割り込み」に厳しい国だということに…
われわれは国にたいして生存権保障を要求する 以下の記事では「戦争=国民国家」と「優生思想=福祉国家」の関係性について述べた。 tunenao.hatenablog.com 国家にたいして生存権保障を要求する場合、つぎのような懸念がある。 優生思想や能力主義の差別性を…
社会権は自由権に優先する わたしは「すべては生存権保障からはじまる」と思っている。これを一口でいうなら〈近代的な立憲民主主義の自由主義思想において、人権保障の大前提は(個人の幸福追求権を含めた)市民的自由権よりも、生存権を含めた社会権のほうを…
「上野vs.江原」論争 上野千鶴子は昔も今もずっとマルクス主義フェミニズム(マルフェミ)の立場である。上野のマルフェミは「物質的基盤」を重視する。経済的な下部構造としての物質的基盤を無視するフェミニスト・アカデミシャンたちを上野は「文化派」とよ…
インターエイブル(interabled couple)を描いたドラマ 昨年、韓国ドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(Netflix)がヒットした。 世界では非英語部門のTV番組で配信開始から6週連続でTOP10入り、そのうち2位になったのは一度きりでTOP1に君臨し続けている。(シ…
個人や社会のあらゆる悲惨さは、労働への情熱から生まれる(ラファルグ) なぜ、かくも労働は道徳と結びつき「勤労」(労働への情熱!)となったのか。この二つの結合こそが私たちの労働にまつわる生きづらさの正体である。 「スラッカー」(怠惰主義)は、労働…
ニート≒スラッカー スラッカー(slacker)という概念は日本ではほとんど定着していない言葉だ。スラッカーは「怠け者」「怠惰なひと」「何もしてないひと」「義務や責任を回避しているひと」「徴兵回避者」「働かないひと」「勤労意欲に乏しいひと」...等々の…
TVドラマ「裸の大将」とは《画家の山下清をモデルに描いた人間ドラマ》である。(裸の大将放浪記)。1980年〜97年までフジTV系列で放映され、主演の芦屋雁之助の熱演(はまり役)もあって人気ドラマであった。ダ・カーポが歌う主題歌『野に咲く花のように』が流…
「かつら」はファッションである ぼくはファッションにはあまり興味がないが、「かつら」(あるいはウィッグ)には興味がある。 「かつら」はファッションとして使用されるときは「つけ毛」「ウィッグ」とよばれ、「薄毛」を隠す目的で使用される場合にかぎ…
GIとSOは分離できるか セクシュアルマイノリティの問題を一言で示そうとして使用された「LGBT」という括り方にはいろいろと問題があった。そのあとできた「SOGI」という括り方にも問題はある。ジェンダー・アイデンティティ(GI)とセクシュアル・オリエンテー…
私たちは「見た目」で性別判断してしまう“クセ”がある トランスジェンダーを差別することは、容姿や見た目による差別と通底している。これは、年齢差別、女性差別、人種差別、障害者差別、ハンセン病差別などにも見いだせる。「見た目」から判断して分かるよ…
ネットとリアルを使い分けるひとたちがいる。こういう人たちを「デジタルネイティブ」と呼ぶ。いまではネットと現実の「複層的現実」(Multi-Layered Reality)を苦もなく生きる人たちは「当たり前」になった。 「オタク」というレイヤー 先ごろ海外の「アニメ…