おんざまゆげ

@スラッカーの思想

「複層的現実」で生き延びる

ネットとリアルを使い分けるひとたちがいる。こういう人たちを「デジタルネイティブ」と呼ぶ。いまではネットと現実の「複層的現実」(Multi-Layered Reality)を苦もなく生きる人たちは「当たり前」になった。 「オタク」というレイヤー 先ごろ海外の「アニメ…

「二重の排除」と「マイノリティ」—— 変革者としてのクィア的存在

「意味/無意味」が成り立つためにはホモ・サケル的な第三項排除としての「非意味」が必要になる。同じように、「優者/劣者」という価値序列が成り立つためには、価値評価の対象外(優者にも劣者にもなりえないもの)が必要になる。 「優/劣」のような社会的評…

他者を「尊重」すること —— 「尊重」という態度は歴史的に“発明”されたもの

・「尊重」とは「否定しない」こと 私の理解では、「尊重」(=respect)というのは、「個人の尊厳を尊重する」ということ。どんなことがあっても他者をバカにしたり貶んだり蔑視したりしない態度のことです。ひとことで言うなら「個人の存在を否定しない」こと…

「家族主義」の淵源 —— 「家族国家」と天皇制

川島武宜の『イデオロギーとしての「家族制度」』、『日本社会の家族的構成』を読んで、改めて日本社会の「家族主義」の根深さを思い知らされた。 あらゆる組織(会社や学校など)が「家族」のような共同体になってしまうのは、明治から始まる近代化=国民化…

「家父長制(=家族主義)」から「親密圏(ジェンダー平等)」へ ——「資本の論理」に汚染されない場所が必要

「システム」と「生活世界」という区別がある。「システム」は「市場社会=等価交換の世界」に、「生活世界」は「親密圏=贈与の世界」に対応する。 具体的に言うならこうなる。家族的なホームから「行ってきます」と言って市場社会へと出撃し、労働者としてボ…

男性性と性的興奮——「政治的に正しい勃起」はありうるか?

【ヘテロ男性の性的興奮について】 ポルノグラフィ規制派でアメリカのラディカル・フェミニストであるキャサリン・マッキノンやアンドレア・ドウォーキンは、「異性愛者のセックスはすべて男性による強姦である」という強烈なテーゼを主張した。しかし一方で…

「強い当事者主義」問題——セクマイ問題の“ややこしさ”について

セクマイ問題はどうして“ややこしい”のか——。最近だったら社会学者の千田有紀さんが「トランス差別」に関するツイートで炎上した。のちに千田さんは『現代思想』(2020年)で『「女」の境界線を引きなおす—「ターフ」をめぐる対立を超えて』(=千田論文)を書い…

絶対的な生きづらさ——「個体化の不条理」について

哲学の分野には「他者問題」とか「他我問題」というのがあります。ぼくが考える「個体化の不条理」というのはそれに関係します。人間の場合は「身体化の不条理」とよんだほうが近いかもしれません。 たとえば、頭痛になったときに症状(痛み)を他者に訴える。…

「正しさ」ではわりきれないもの

「正しさ」だけではわりきれないことがある。人間は感情的な生きものだから...。 ぼくはYouTubeの犬や猫の動画に癒やされる。その一方、5分程度の動画でサラリーマン年収を超えてしまう「動物YouTuber」に嫉妬する。自分はこんなに苦労して働いているのに、…

「日本的生きづらさ」と「トレース問題」——「生きづらさ」を三つの次元で考える

「生きづらさ」の淵源には二つの源流がある。「社会」と「世界」、あるいは「社会的アイデンティティ」と「実存」。 社会的な生きづらさには「苦痛」という言葉が、実存的な生きづらさには「苦悩」という言葉が合っているように思う。 実存的な生きづらさ(=…

SEALDs系の運動に参加して感じた違和感

脱原発デモに参加したことがきっかけでSEALDs系のデモに参加したことがあった。違和感だからけだった。ぼくが参加していたのは小規模のものばかりだったけど、小規模だからこそ周囲の人間の「顔」がよく見えた。生活には困っていない「明るい学生」ばかりだ…

「左翼」や「リベラル」のクソさについて

1.ほんとうの左翼・リベラルとは... 2.赤木智弘氏の「希望は戦争」論 3.左翼・リベラルのクソさが「日本会議」を生んだ 4.「反天皇制運動」も日本会議と同じ 5.「ネトウヨ」も左翼・リベラルのクソさが生んだ 1.ほんとうの左翼・リベラルとは...…

真実と嘘

「真実」を言ったのに誰も信じてくれない...聞いてくれない...ということがある。これは聞く側に「聞く耳がない」ということではなく、「語り方」に問題があると言われている。真実を語るにもある程度のウソ(演技・脚色・演出)が必要であり、真実をそのまん…

結局、「私はこう思う」としか言えない

誰かに何か相談されたとき、その相談に直接答えるかたちで「それはやめたほうがいい」とか「こうやったほうがいいと思うけどな...」みたいに言ったとする。これってアドバイス的でコントロール的になるのではないか? そういうときは、「私だったらやめると…

「感じない官僚的人間」になりたくない

ぼくは「知ることよりも感じることのほうが大切だ」という命題(レイチェル・カーソンの言葉)に賛同している。これは真理だと思っている。知識より感情。何かを知ることは重要なことだけど、そこに何らかの思いや感情がなければ知識はたんなる上辺だけの知識…

本当に「救われない」と覚悟したとき、逆に救われる気がする —— 死・意味・価値について

「死」について考えるとき、いつもふたつの感慨にとらわれます。ひとつは、「人間はいつか必ず死ぬ。人生は有限である。残された時間は少ない。なのに、自分は今、とてもくだらないことをしている。こんなことをしていていいのだろうか...」という感慨。もう…

選挙に乗れない理由 ―― ルーマンの「冷めた理論」

前回の参議院選挙(2019)では、「れいわ新選組」を支持した。でも、ぼくはまったくもって選挙というものを信じていない。 もともとノンポリだったこともあり、選挙には熱狂できない体質である。山本太郎の演説には感動するが、だからといって何かが変わると思…

「二種類の人間」

自動車教習所に通っていた頃の話です。 空き時間に教習コースをボーッと見ていました。自動車コースで複数台、バイクのコースには2台走っていた。ザァザァと雨が降っており、バイク教習のジグザク運転はすごく大変そうでした。 ぼくの他にもボーッと見ている…

「日常生活に潜むリバタリアニズム」— 再分配政策(生存権保障)の正当性・社会保障のあり方・分配的正義論(引用メモ)

「日常生活に潜むリバタリアニズム」(=「わたしが働いて得たお金はすべてわたしのものだ」というロジック)を批判する主張(引用メモ)を紹介する。批判対象は主にロック的所有権論=ノージック的リバタリアニズムである。具体的には、租税の正義論・分配的…

トランスフォビアとパス至上主義 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (4)

今回はトランスセクシュアル(TS)に対する差別と、このTS差別(トランスフォビア)の根底にあると思われる本質主義的性別二元論(=パス至上主義)について考えてみたい。 TS(トランスセクシュアルの略)の問題系は、現存の性の制度に生きるすべての人の問題系で…

ポルノ擁護論とマスターベーション論 ——セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (3)

今回はいままでの流れとはちょっと外れて、上野千鶴子さんのセクシュアリティ定義、ポルノグラフィ擁護論(=表現の自由を擁護し、ポルノ規制に反対する立場)、マスターベーション論を考えてみたい。 性欲/性行為/性関係 上野千鶴子のポルノ擁護論 マスター…

社会構築主義と「クィア存在」の可能性 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (2)

前回は異性愛主義について論じた。要約すると以下のようになる。 異性愛主義(ヘテロセクシズム)は、性差別(セクシズム) —— 性差の階層秩序(女性差別)と性対象の階層秩序(同性愛差別) —— をつくりだし、この性差別のうえに支えられているのが異性愛主…

異性愛主義と性差別 —— セクシュアリティ・フェミニズム・クィア理論 (1)

今回は竹村和子さんの書籍(論文集や対談集)などをひもときながら「セクシュアリティ」について考えてみたいと思います。 すなわち [ヘテロ]セクシズムが、わたしの身体/精神の隅々までを構造化している … (竹村 2002:135) なぜ「セクシュアリティ」を問う…

『安心して絶望できる人生』/「生きづらさ」の当事者研究

今回は「当事者研究」に関する書籍をご紹介いたします。ソーシャルワーカーの向谷地 生良(むかいやち いくよし)さんが2006年に出版した著書『安心して絶望できる人生』をひもときながら当事者研究の概要を以下にまとめてみました。 当事者研究とは、北海道…

生き延びるための読書計画 2019 — 労働・貧困・セクシュアリティ

「計画」と言っても適当です... 「生きづらさ」低減に向けた「生き延びるための読書」計画を立てました。計画といってもざっくりした大枠ですので、計画から逸れて他の分野に飛ぶかもしれません。 あと、一年間でやれるかどうかは私の精神的な気分・体調と自…

来年に向けて!

9月以来、ブログを放置していました。 いろいろ理由はあるのですが、3つあげるなら、1) モチベ低下 2) 精神的な気力低下 3) 読書時間低下......といったところです。 振り返れば2016年、2017年は年間で60記事以上は書いていました。最低でも週に1回は更新し…

「あられもなさ」という性的快楽 —— なぜ、恋愛感情とセックスはつながるのか (2)

《 概要 》 セクシュアリティにかんする問題は本ブログのテーマの一つである。*1 恋愛感情とセックスの関係については以下の記事で詳しく論じたのだが、今回はこの話のつづきである。*2 tunenao.hatenablog.com *1: セクシュアリティは重要なテーマである...…

『経済成長がすべてか? — デモクラシーが人文学を必要とする理由』/ 「ディーセントな人間」になるために

著者である「マーサ・ヌスバウム教授」の経歴 アメリカのシカゴ大学教授で女性哲学者。専門はアリストテレス研究だが、哲学以外にも古典学、政治哲学、法哲学、教育学、フェミニズムなど多数の著作があり、幅広い分野で活躍している。2016年には京都賞を受賞…

【新刊】興味ありがちな新書・選書 /7月〜8月 新刊

7月〜8月の新刊(新書・選書)です。 選定ルールは、 ・7月〜8月に出版された興味ありがちな新書・選書。 ・独断と偏見チョイス

【新刊】興味ありがちな文庫本 / 7月〜8月 新刊

7月〜8月の新刊(文庫)です。 選定ルールは、 ・7月〜8月に出版された興味ありがちな文庫。 ・独断と偏見チョイス